
スーダンでの医療見学実習の報告と感想
大分大学医学部医学科 4年
杉本 寛文
(2006年7月19日〜26日)
一週間という短い滞在期間ではありましたが、オムドゥルマン大学医学部部長のDr.イブノフや川原先生の御好意で、オムドゥルマン大学医学生とのポリクリ(臨床実習)の体験、ハルツーム市内の病院とスーダン東部のガダーレフ州にある診療所(病院)の見学をすることができました。
ハルツームではアフマド・ガーシム病院の小児病棟とイブンシーナ病院(日本のODAで設立)を見学しました。小児病棟では、下痢と感染症による入院患者が多かったのが印象的でした。イブンシーナ病院では病院内の様々な施設を見学しただけでなく、Dr.イブノフの手解きのもと触診を体験しました。ポリクリ未経験の私にとって医師の立場で患者さんに触れるのは今回が初めてであり、その患者さんがスーダン人であったという、日本の医学生では稀な経験をする事ができました。その時教えて頂いた腹水の打診と肝肥大の触診の所見は一生忘れない事でしょう。
ガダーレフ州ガランナハルの地域診療所では、外来患者との入院患者の診察を見学しました。どちらの診察も問診、視診、触診だけで行われており、初期診療における機器を用いない診断能力の重要さを実感しました。
またドカの地域病院ではマラリアとリーシュマニアの検査を見学し、実際に陽性の標本を観察することができました。マラリア検査の陽性率は、通常は10%前後、雨季には20%前後(検査を受ける患者は診察で振り分けられています)になるという事実には、ただ驚くばかりです。日本ではあまり馴染みの無かった寄生虫学が身近に感じられるようになった瞬間でもありました。
オムドゥルマン大学医学生(6年生)とのポリクリ体験は、この一週間の滞在の中で一番衝撃的な出来事でした。日本のポリクリは未経験なので、方法の比較はできませんし、内容は英語なので私には10%程度しか理解できませんでした。しかし、スーダンの医学生(私の参加したグループでは特に女子学生)の熱心で積極的な姿勢、堪能な英語、同じ教科書(私は日本語版ですが)を使用していると言う事実に、私の全身は「やばい」という危機感でいっぱいになりました。果たして10年後に彼・彼女らと会った時、医師として同じ土俵に立っていられるのだろうか。
医療水準が高いと言われる日本で大学を卒業して医師の経験を積めば、それなりの医師になれるのではないかという根拠のないものを、私は漠然と心の中に抱いていたような気がします。そんな私にとってスーダンという日常とかけ離れた場所で、医師として一つの基準をイメージできた事はとても有意義な事でした。医師という職業を通して人生を愉しむために、もっと貪欲にガツガツと知識・技術を吸収していくハングリーな精神を持ち続けていきたいと思います。このような貴重な機会を与えて頂き、またスーダン滞在中様々な面倒を見てくださった川原先生、霜田さん、海原さん、荒井さんにはとても感謝しています。本当にありがとうございました。
最後に見学実習以外のことにも触れておきたいと思います。ロシナンテス・ハルツーム事務所にはロシナンテス文庫という素晴らしい蔵書があります。厳選されたラインナップ。早朝、青空の下でする読書は最高でした。またハルツーム事務所では様々な日本人の方のお話を伺う事ができました。ユニセフ職員の方、大使館職員の方、MSF(国境なき医師団)の方、そして某新聞社編集委員の方。日本でこのような方々に出会おうと思ったら一週間では不可能です。とてもラッキーでした。
ロシナンテスはスーダン東部で活動をしています。旅行では体験し難い現地の人の生活、考え方を垣間見る事ができました。自分の生活環境にない要素を実感できた事は、思考を柔軟に保つ上でとても役立ちます。
私にとってこの一週間は、ここ5年間で最も充実した一週間でした。