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日本人学生研修事業

研修感想文(平成19年3月10日から20日まで)

鹿児島大学医学部医学科 4年
田中 裕子


今回、研修をさせていただいたガダーレフ州、シェリフ・ハサバーラ村。FGM(Female Genital Mutilation:女性性器切除)100%、自宅分娩率100%、マラリアの罹患率が極めて高く、村人の疾病の予防に関する意識が乏しい。開発に関わる者が、この村の調査に訪れたとしたら、マラリアコントロールプログラム、健康教育プログラム、TBA(Traditional Birth Attendant:伝統産婆)教育プログラムなど、あっという間に幾つかのプログラムを作るのではないだろうか。ジェンダーequalityプログラムなんていうのも作るかも知れない。しかし、そのように早急に作られたプログラムは、開発者側の自己満足に終わってしまうであろうし、場合によっては、「開発」という名の暴力となるかもしれない。

シェリフ・ハサバーラ村では、村長であるハッサン氏の家に滞在させていただいたが、その間に、幸運にもハッサン氏の奥様の出産に立ち合わせていただく機会を得た。普段調理などに用いられる木で作られた簡素な小屋において、懐中電灯すら灯すことも許されない真っ暗闇の中での出産。むき出しの土の地面に一枚絨毯が敷かれ、妊婦はその上にひざをついた状態で天井からつるされた紐をしっかりと握り、後ろからは介添人が妊婦を支え、前では産婆が構え赤ん坊を取り上げようとしていることが辛うじて分かった。妊婦はうめき声一つあげない。やがて闇の中で破水の音が聞こえ、見守るように周囲を囲む複数の女達の熱気が感じられる中、暗闇を破るかのように赤ん坊の力強い声が聞こえた。後ほど知ったことであるが、出産に際し妻が声をあげると、夫はその事で村人から嘲笑されるらしく、妊婦が声を出すことは許されないという。地面には事前に穴が掘られていたらしく、胎盤はちょうどその穴に生々しく落ちていた。産婆は、その辺りにあった布の端をほぐした糸で臍の緒を縛り、小刀のようなものでそれを切った。その後、胎盤は別の女性によって外に持ち出され庭に埋められ、胎盤が落ちていた穴は、地面に散らばっていた血液と共に瞬く間に砂で埋められた。灯りを灯すことを許された後に見ると、産婆は上半身裸の姿で赤ん坊を取り上げていたことが分かった。一仕事を終えた産婆は、桶に浸かり体を清めており、その姿は、神々しくさえ見えた。

衛生的な環境で、スタッフの数も機材も整った病院で行われる日本における出産とは全く異なり、土の上で、暗闇の中、手探りで行われる分娩。あまりにも原始的なスタイルであったが、私には、「命」がこの世に生まれたことが実に生々しく、大変神秘的に感じられた。母親は、裸の産婆に支えられ、赤ちゃんを産婆と共にこの世に送り出す。老婆、母親、赤ん坊と、時代を超え命のバトンが確実に渡されたのだと「生」を強く認識させられた。

日本の病院における出産を当たり前だとする人からすれば、シェリフ・ハサバーラ村での出産様式は問題点が多く、改善すべき点が多々あると感じられるのではないだろうか。しかし、彼らには彼らのスタイルがあり、その方法で確実に命を紡いできたのである。単純に日本の常識を当てはめ、村での出産を劣ったものと捉えることは出来ない。

開発にあたり、「相手の文化を尊重することが重要である」とよく言われる。それは、書物や、短期間の調査などで得られる知識に基づくものではなく、自分の持っている「常識」に決してとらわれることなく相手の懐に飛び込むことにより、初めて見えてくるのではないであろうか。

ロシナンテスの川原先生は、「僕があれこれと言うのではなく、村人達がやりたいということを、右に左に共に迷いながら一緒にやっていきたい」とおっしゃられていた。村人と寝食を共にし、短期間で物事を考えるのではなく、しっかりとそこに腰を落ち着けられて、その生活を楽しまれていた。先生の活動を見ていると、まさに村での生活にどっぷりと身を投じ、「開発」ではなく、「協働」という言葉がぴったりのように感じた。そして、「開発」を「国際協力」と言うには、まさにこの姿勢が大変重要であると思えた。このことを真の意味で理解させてくれた川原先生に心より感謝すると共に、将来、私が国際協力に携わるにあたっては、昨今の潮流である「成果重視」に流されることなく、「協働」という姿勢を重要視したいと思った。

ロシナンテスがシェリフ・ハサバーラ村で活動を始めてからわずか2ヶ月しか経っていないと伺った。当初、建物だけであったヘルスセンターに、薬が入り、電気と水が村人達の手で通され、診療が開始された。ロシナンテスは、村人と共に着実に歩みを進めている。

ロシナンテスの活動が、今のまま、村人と共に進んで行くことにより、結果、素晴しい実を結ぶであろうことを心より期待します。そして、私自身が医者になった後、いつの日か再びロシナンテスの活動に携わらせていただく機会を得ることが出来ればと願います。

貴重な研修の機会を与えていただきました、川原先生を始め、ロシナンテスのスタッフの皆様、シェリフ・ハサバーラ村の皆様、その他、お世話になりました大勢の皆様、本当に有難うございました。

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