
スーダン・ハルツーム訪問
北海道大学医学部6年
森 温子
スーダンの首都ハルツームから7時間あまり自動車を走らせると、目的地『シェリフハサバラ』に到着します。ここ、『シェリフハサバラ』で川原先生が診療を開始されたのは、つい1ヶ月前の2月17日の話です。『シェリフハサバラ』は、首都ハルツームの東部に位置する人口3000人の小さな村で、「グッティーヤ」と呼ばれるわらぶき屋根の民家が建ち並びます。ここではハッサン村長が力を持ち、村を治めています。川原先生の家(グッティーヤ)はハッサン一家の住む土地の中にあり、診療所も歩いて2分の場所にあります。
川原先生の診療は8:30にスタートします。8:00に診療所に到着。既に戸の前でちらほらと患者が先生を待ち構えています。まずは30分、診察室の掃除です。その30分の間にも患者が続々と入ってきました。患者の訴えは「熱っぽい」「咳が出る」「のどが痛い」といったものが多く、一見日本とあまり変わりありません。しかしここはアフリカ、マラリアの流行地です。多くの患者がマラリア検査を受け、マラリアと診断されます。川原先生は、「問診」「診察」「マラリア検査」「カルテ記入」以外にも、「薬の処方」「会計」などなど、薬剤師・会計師の仕事もこなしながら午前中休みなく数十人の患者を診察しました。午前の診療を終えようとしたそのとき、高熱の患者がやって来ました。先生が、患者の首を動かすと「首が痛い」と訴えます。マラリア検査では陰性、原因が分かりません。もしかすると、死に至る危険のある「髄膜炎」かもしれません。州の拠点病院『ショアク病院』へ患者を搬送することになりました。搬送とは言っても救急車は無いので、川原先生の運転です。1時間後『ショアク病院』到着。結局、その患者は、マラリア検査では陰性でしたが、ほかの症状・検査よりマラリアと診断され、入院となりました。1時間後、『シェリフハサバラ』の診療所に戻り診療が再開され、夕方まで診療が続きました。
川原先生が赴任する前には、この村には医師がおらず、ヘルスアシスタントが薬を管理していました。そのため、正確な診断がなされないまま、薬づけの医療が行われていました。村民は、長年のそのスタイルに慣れてしまっていましたが、川原先生の医療は、『ショアク病院』と連携しながらの「正確な診断→必要な治療→治療後のフォロー」という今までとは違うスタイルでした。あくまで村民のペースに合わせるというこの先生の姿勢が、今後『シェリフハサバラ』に浸透していくことが期待されます。更に、『シェリフハサバラ』は人の移動も少ないため、将来、マラリアなどの疫学調査や、診療所での症例をもとにした臨床研究などの可能性を秘めた村です。スーダンには『シェリフハサバラ』以外にも医師のいない村がたくさんあるといいます。川原先生の診療が、1つの小さな村、『シェリフハサバラ』の医療改革を起こし、今後その小さな波が州・国へと広がる大きな波になり、アフリカの医療をよりよい方向へ変えていく大きな力になるだろう、と感じました。
今回、スーダンに関する知識を持たずに、「アフリカでのプライマリケアを見たい」という気持ちで見学させていただきました。知識不足による誤解などもあり、たくさんご迷惑をおかけしましたが、ロシナンテスの方々、川原先生、そしてかずみ先生の温かさ、ユーモア、スーダンへの熱い思いに触れ、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました。