
スーダン滞在記
長崎大学医学部
千早啓介
自分自身が海外の被災地を支援する学生NGOで活動しているということもあり、今回は川原先生が診療をどう行っているかということの他に比較的新しい団体であるロシナンテスが団体をどう運営しているか、実際に先生に会って話を聞いてみたいと思い研修を受けさせていただきました。
診療所のあるハサバラへ着いたのは午後7時、もう暗くなった頃で、先生はまだ診療中でした。入るなり赤ん坊を抱かされて、体重を計るように言う先生は日焼けして現地の服を着ており正直本当に先生かと疑ってしまいました。以来ハサバラで過ごした十日間のうち、診療のある日はそばに付いてその様子を見ながら、機会があれば手伝わせていただきました。
マラリアの流行しているこの村での診療の多くは、診察・検査キットによるマラリア検査・血液塗沫標本の作成・カルテ記入・薬という単調なものですが、しかしこの村で診療所を始めた頃は我先にと詰め寄ってくる人で混乱していたそうです。先生は、診療がこんなに地味だとは思ってなかっただろう、と言いますが、単調さはつまり診療所が上手くまわっていているということでもあります。順番を待つことや診察室へは一人ずつ入ることを習慣付け、カルテのないこの国で導入するためにまずアシスタントたちにカルテについて教える、村人のアシスタントを雇うことで村と関わりを増やす、こういう小さなことの積み重ねた結果がこの単調さで先生のやり方なのだと思うとますます興味が湧いてきました。
この州の保健省にも同行させて頂きました。ここでは保健省からは資金をなるべく出さずに日本から来た資金のある団体に任せてしまおうという姿勢が見られたように思います。しかし先生が言うには、ロシナンテスが全て資金を出してプロジェクトを進めてヘルスアシスタントを雇うことは簡単だけれどそれでは将来的に良くない、保健省にいま少しでも関わってもらうことが大事、とのこと。数日後ヘルスアシスタントが保健省に籍を置いたまま診療所で働けると連絡が入ったときの先生の嬉しそうな顔が印象的でした。地域の住民だけではなく上の保健省や政府とも根気強く付き合って活動されているようです。
ある診療中に、難しい例で自分の手には負えないと産婆が診療所へ駆けつけ、出産中の妊婦をロシナンテスの車で近くの病院へ搬送しました。ムスリムの女性の出産には男性は立ち会うことができないのが原則ですが、手術室に入っていた先生が許可を取ってくれて自分も補助として入らせてもらいました。貴重な機会を与えていただいて感謝しています。
上手くまわっているとは言っても診療所にはまだ問題が残っているようです。ムスリムの女性に対する診療や事務仕事のできる環境が整っていないこともそうですが、先生は一つ一つ丁寧に改善していくと思います。
今回は自分の他に先生の後輩である大嶋さん、先生の取材に来た永松さんと三人で先生を訪ねたことで、三人の視点から川原先生とロシナンテスを知ることが出来ました。
医務官だった頃、個人での巡回診療、NPOロシナンテスの発足から現在まで。
NPOとして発足してからの組織造りはとても勉強になりました。
医師や母校のOBたちの協力や、そこから拡がるつながりがロシナンテスをつくっているようです。先生の人徳かと思いましたがそれだけではなく、印象深かったのは毎日話をする中で大嶋さん永松さんがロシナンテスの活動についてアイデアを出し合い、川原先生と目標を共有していたことです。川原先生を支持していくうちに自分自身もどんどん参加してロシナンテスやスーダンについて積極的に考えていっているように感じました。自分が活動している学生NGOでは良い活動を行い組織としてしっかりしていけばきっと支持してもらえると、そう思ってきましたが、そうではありませんでした。川原先生とその活動を支持する人ではなくて、先生を中心に皆で活動しているロシナンテスをとても羨ましく思います。
今回ロシナンテスだけでなくロシナンテスを通してスーダンについても多く学ばせてもらいました。結婚式に参加し大学も訪問させてもらい、都会と村の様子や人の習慣や考え方、日本人と違うところ同じところを見ることができました。これまでの自分のスーダンへのイメージはほんの一部の問題から来る偏ったものでしたが、これからはしっかりと見たいと思います。
ありがとうございました。