アフリカ初のポータブルX線装置ガイドラインをリリース!7か月かかった作成の裏側
ザンビア駐在員の佐藤です。先日理事長の川原より、ザンビアでポータブルX線のガイドラインを交付できた喜びをお伝えしました。今回は、実際にどんな障壁があったのか、特に苦労したのはどんなことか、といった裏側についてお伝えしたいと思います。
ロシナンテスは、ザンビアで深刻な課題である結核対策の一環として、富士フイルムのポータブルX線装置を活用し、2023年から巡回検診の体制構築・拡大に取り組んできました。X線装置がない診療所に装置を持ち運び、現地で撮影を行うことで、これまで診断する機会のなかった人々にもアクセスを広げています。
しかし、装置導入と巡回検診体制の構築にあたり、制度上の大きな壁に直面しました。
ポータブルに活用できない制度の壁
日本における訪問看護やへき地医療を目的に開発された本装置は、放射線量が極めて低く、家庭の寝室でも使用される設計です。しかしザンビアにはこうしたポータブルX線装置に対応したガイドラインが存在せず、固定型装置と同様の規制(5m×5m以上の部屋、鉛扉、遮蔽壁の設置など)が求められました。しかし実際には、装置から3m以上離れれば放射線の影響はほぼゼロとされ、現地でも柔軟な運用が可能なはずでした。
ロシナンテスは、富士フイルムやザンビア大学病院の医学物理士と協力し、ザンビア放射線防護局へ何度も安全性を説明しましたが、ガイドラインが存在しないために担当者ごとに対応が異なり、正式な許可取得まで時間を要しました。最終的には使用許可を得ることができましたが、今後巡回検診を広げていくには、毎回このような手続きを繰り返すのは非効率であり、せっかくのポータブルX線装置の利便性が活かせません。
そこでロシナンテスは2024年12月、ザンビア保健省に対してポータブルX線装置の国家運用ガイドライン策定を正式に提案し、関係機関との準備を開始しました。様々な関係者にヒアリングをし、医療従事者の不安に寄り添い、富士フイルムの皆さまのご協力を仰ぎながら課題を整理することで、数か月かけて下準備を整えました。
数日かけて策定会議を開催
2025年4月7日から11日には、中央州カブウェにて策定会議を開催し、保健省の医療機器担当者、各州保健局の医療画像担当者、ザンビア大学病院の放射線医、放射線技師協会、放射線防護局、また同様にポータブルX線装置を導入しているザンビア感染症研究センターやZambart(ザンビア大学医学部とロンドン大学衛生熱帯医学大学院の共同研究を基盤に2004年に設立されたザンビアのNGO)も参加しました。富士フイルム南アフリカ支社からも技術説明のためにご参加いただきました。

会議では各機関が現状と課題を共有し、ガイドラインの必要性について認識を深めました。ロシナンテスからも、実際の運用事例と直面した課題について発表し、当日は理事長の川原がガイドライン策定の意義を強調しました。
参加者全員の尽力により、策定会議内で無事にドラフトを完成させることができました。
新ガイドラインのポイント
ガイドラインの大きなポイントは、固定型X線装置に求められる専用検査室がない施設でも、屋外・屋内を問わず、周囲の安全確保ができれば装置の使用を認めるという運用指針が盛り込まれたことです。
このドラフトはロシナンテスを通じてザンビア保健省へ提出され、保健省大臣と次官の署名・承認を経て、2025年7月22日にガイドラインとして正式に公布されました。
公布式当日には、保健省次官、臨床部門のアシスタントディレクター、ザンビア大学病院の放射線医が登壇し、ロシナンテスからは私、佐藤が登壇いたしました。次官からは次のような発言がありました。
“The Ministry is committed to enhancing access to quality diagnostic services, especially in underserved and hard-to-reach communities. He emphasized the game-changing role of portable digital X-rays in managing tuberculosis, trauma, and other critical conditions, and hailed the new guidelines as essential in standardizing usage, safety practices, and regulatory compliance.”
「保健省は、特に医療サービスが行き届いていない地域やアクセスが困難な地域において、質の高い診断サービスの提供を強化していくことを約束します。ポータブルデジタルX線装置は、結核や外傷、その他の重大な疾患への対応において、画期的な役割を果たすものであり、本ガイドラインはその活用方法、安全管理、法的遵守を標準化する上で不可欠なものです。」
私からは、本公布式がザンビア保健省および関係者との結束を強め、ポータブルX線装置を活用したユニバーサル・ヘルス・カバレッジ実現への一歩であることをお伝えしました。
ザンビア保健省の本公布式についてのFacebookの投稿:
https://www.facebook.com/share/p/19QLh1nzoF/
策定提案から公布まで約7ヶ月という時間がかかりましたが、無事に形にできたことに安堵しています。このガイドラインは、ザンビア保健省をはじめ、放射線技師を含む医療従事者の皆様のご協力によって実現できたものです。また、ロシナンテスの高山理事をはじめ、関係者の皆さまのアドバイスも非常に大きな力となりました。
今後はこのガイドラインを基に、より多くの病院や診療所で巡回検診が行える体制を整えていく予定です。引き続き、応援をよろしくお願いいたします!