特定非営利活動法人ロシナンテス

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ノーベル平和賞受賞はならずでしたが……スーダンの若者たちによる人道支援団体「緊急対応室」をご紹介します

スーダンの若者たちによって立ち上がった人道支援団体「緊急対応室」が、2025年ノーベル平和賞の有力候補と報道されていました。受賞はベネズエラ反体制派の活動家マリア・マチャド氏に決まりました(おめでとうございます!)が、せっかくの機会ですので、人道支援団体「緊急対応室」についてご紹介したいと思います。

スーダンの人々自身による「助け合いの仕組み」

「緊急対応室(Emergency Response Rooms:ERR)」は、2023年4月にスーダンで勃発した武力衝突の中で、地域の若者や医療従事者、市民ボランティアたちによって立ち上げられた支援ネットワークです。

国家機能が崩壊した地域で、食料・医療・水・避難支援などを、地域住民自らが協力し合いながら続けてきました。現在では国内各地に数百の「ルーム(部屋)」が存在し、紛争下でも命を守り、互いを支える活動を展開しています。

スローガンの一つである “By the People, For the People” は、 「支援の対象ではなく、支援の主体となる」という市民の誇りを表しています。

ノーベル平和賞の候補に挙がったことは、こうした「自らの手で命と尊厳を守る」市民の努力が国際的に評価されたといううれしい出来事でした。

ロシナンテス理事長・川原尚行 コメント

「スーダンの地で長年活動してきた私たちにとって、スーダンの草の根組織がノーベル平和賞の有力候補になったという報道は、まるで自分たちの仲間が認められたようなうれしい出来事でした。

「緊急対応室」の支援活動は自然発生的に立ち上がりました。銃声の鳴り響く中でも、“誰かを助けたい”という思いで動き続けた市民たちの勇気と連帯が、多くの人々の目に留まったということです。

スーダンの人々は決して諦めていません。受賞は叶いませんでしたが、国際社会が改めてスーダンに目を向け、人々の声に耳を傾け、支援の輪がさらに広がるきっかけになることを心から願っています。」

2024年末、ポートスーダンで出会った若者たちと

▼ノーベル賞候補、という報に触れ、ポートスーダンで撮影した動画
https://youtu.be/1iJL5fq_84M?si=u068jwvJlKOiZZub

スーダンの人々とともに

政府や大きな組織による支援ではなく、市民自身の力が人々を支える仕組みが注目されたことは、世界の厳しい状況にあるすべての地域にとって本当に大きな意義があると思います。

ロシナンテスは、「緊急対応室」をはじめとするスーダンの草の根支援者たちの勇気と献身に深く敬意を表し、私たちにできる支援を今後も継続してまいります。

▼内戦が始まってからの各種記事
https://www.rocinantes.org/blog/category/sudan/sudan-others/

スーダンの厳しい状況

2023年4月、スーダンの首都ハルツームで国軍(Sudan Armed Forces:SAF)と準軍事組織「即応支援部隊」(Rapid Support Forces:RSF)による大規模な戦闘が始まりました。以降2年半にわたり市民の安全・保護を軽視した戦闘が続き、人々は世界最大規模の避難と飢餓の危機に直面しています。3,040万人※1が人道支援を必要とし、2,500万人※2 が深刻な飢餓に直面しています。避難民は延べ約1,200万人※3に達し、世界最大規模の人道・避難危機となっています。

「緊急対応室」参考情報

  • 2024年時点で約1,100万人以上 に支援を届けたとされ、スーダン国内でも「命をつなぐ最後の砦」と呼ばれています※4。
  • 国連・国際NGOが安全確保のため撤退した地域でも、「緊急対応室」が住民同士の協力によって支援を継続しています※5。
  • ノルウェーの「ラフト人権賞(Rafto Prize 2025)」 を受賞し、住民主導の新しい人道支援モデルとして注目を集めています。
  • Peace Research Institute Oslo(PRIO)が、2025年ノーベル平和賞有力候補として「緊急対応室」を公に推薦しました。
  • 活動資金の多くは、スーダン国内外の国外避難民や小口寄付 に支えられています。国際的な制度的資金支援はほとんど受けていません。

出典・情報源(いずれも2025年10月10日参照)

※1. スーダンの人道ニーズと対応計画2025(OCHA管理): https://reliefweb.int/report/sudan/sudan-humanitarian-needs-and-response-plan-2025-overview 

※2. 世界食糧計画(WFP)スーダン緊急事態: https://www.wfp.org/emergencies/sudan 

※3. 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)スーダン状況: https://data.unhcr.org/en/situations/sudansituation 

※4. ERRの活動に関する考察(OCHA管理): https://reliefweb.int/report/sudan/key-considerations-mutual-aid-lessons-and-experiences-emergency-response-rooms-sudan 

※5. Right Livelihood Foundation(ERR紹介): https://rightlivelihood.org/the-change-makers/find-a-laureate/emergency-response-rooms/ 

※6. ロイター通信(ラフト賞受賞報道): https://www.reuters.com/world/africa/sudanese-network-volunteer-aid-groups-wins-norwegian-human-rights-award-2025-09-17/ 

※7. TIME誌(ERR資金源・活動に関する報道): https://time.com/7204654/sudan-humanitarianism-crisis-err-aid/