命懸けで戦禍を逃れる人々を追った映画『ハルツーム』をスーダンの地で観て
こんにちは、ロシナンテスの川原です。現在、私はポートスーダンに滞在しています。外務省による危険度はレベル4という極めて厳しい状況ですが、幸いにも街は落ち着きを取り戻しつつあります。
そんなスーダンの地で、オンラインを通じて一つの映画を観ました。第20回難民映画祭で紹介された、スーダン発のドキュメンタリー映画『ハルツーム』です。
映画が映し出す5人のスーダン人の現実
この映画は、もともと2022年、戦争が始まる前のハルツームで5人の人生を追うところから始まります。
- 親のいない二人のストリートチルドレン
- 夢を語りながら働く若いシングルマザー
- 民主主義を訴える熱い若者の活動家
- 鳩レースを愛し、家族と共に暮らす公務員の男性
彼らの日常は、突然の紛争とともに一変します。
1,000万人以上が避難せざるを得ない中、映像作家たちは携帯電話を手に、失われゆく日常を必死に記録していきます。
自ら“演じる”ことでしか語れない痛み
この作品の特徴は、本人が“自分の体験”を“自分自身で演じる”という手法が取られていることです。虐げられた瞬間、逃げ惑った夜、家族を思いながら外に出られなかった日々…。
それを再現するたび、彼らの記憶の扉が開き、涙が止まらなくなってしまうシーンも少なくありません。
撮影スタッフが思わず抱きしめる場面もあり、映像ではなく「生きた痛み」がそのまま伝わってきます。
私自身の記憶とも重なるハルツームの街
映画の中には、私が長年活動してきたハルツーム市内の見慣れた風景も多く登場します。
「あ、ここはロシナンテスの事務所の近くではないか」
「このストリートは、いつも車で通っていた道だ」
そう思う場所が次々出てきて、胸が締め付けられました。今はきっと、変わり果ててしまっているのでしょう。賑やかさも、喧騒も、人々の笑顔もあったあの街が、別の姿に変わってしまった現実に、改めて深い悲しみを覚えます。
それでも、人が生きるために必要なのは「希望」
映画の5人は、誰もがスーダンの文化、人々、そして自分たちの生活を心から愛していました。それでも、戦火によって自分自身を守るために、故郷を離れるしかなかった。「戻りたい」という思いと「戻れない」という現実の狭間で揺れる心情が痛いほど伝わってきます。
人が生きるために必要なのは、ほんの小さくても良いから「希望」です。
希望があれば、人は前に進むことができます。
私たちロシナンテスも、小さな力かもしれません。
しかし、スーダンの人々に少しでも希望を感じてもらえるよう、これからも踏ん張って活動を続けていきます。

興味のある方はぜひご覧ください
スーダンの現実を、そして人々の強さと脆さを丁寧に描いた素晴らしい作品です。
よろしければぜひご覧ください。
以下が映画のURLです。
