村の信頼される健康相談役 ー地域に根ざす「ヒーラー」と共に目指す医療
アフリカの多くの地域には、トラディショナル・ヒーラー(伝統的治療師)と呼ばれる、伝統医療を担う人たちがいることをご存知でしょうか。ロシナンテスの活動するザンビアでも、病気や怪我をしたときに、まず地域の伝統的治療師を頼る人は少なくありません。彼らは地域に根ざし、人々の暮らしや健康を長年支えてきた存在です。
ロシナンテスでは、地域の医療の実情をより深く知るため、2025年11月に伝統的治療師の方々を訪ねました。
ザンビアの村落部では、骨折した人が適切な診断や応急処置を受けられないまま時間が経ち、重症化してから病院に運ばれるケースが度々発生しています。そこで2025年12月に医療施設スタッフ向けに行う骨折対応研修に、地域の伝統的治療師の方々にも参加していただくことを提案しました。彼らが伝統医療と現代医療の橋渡しとなることで、地域の連携を強化することがねらいです。今回はその準備段階として、伝統的治療師の方々の活動内容を知るために伺いました。

まず、伝統的治療師ってどんな人?
伝統的治療師は、特に農村地域で人々の健康を支える存在です。日本では少し想像しにくいかもしれませんが、民間療法の担い手であるだけではなく、地域の健康相談役のような役割も果たしています。その知識や力は、ご先祖や精霊から授かったものだと受け止められており、地域社会の中でも尊敬を集めています。 実は世界保健機関(WHO)も、伝統医療を世界各地に存在する重要な医療資源のひとつとして定義しています。
お会いした伝統的治療師のお二人
今回は2人の伝統的治療師さんにお話を伺うことができました。

- クリスティンさん(77歳)
54年に渡り、伝統的治療師として活動しています。彼女は15歳で重い病気にかかりました。どんな治療法を試しても効果がなく、そんな時に先祖からの「声」(spiritual calling)を聞いたことが、治療師になったきっかけだそうです。学校で医学を勉強したことはありませんが、夢の啓示によって、その患者さんにどの薬を使うと良いか診断しています。長引く咳、骨折や外傷のほか不運などもハーブ療法で治療しています。

2. ヘレンさん(72歳)
30年にわたり、伝統医療を行っています。彼女も病気になった時に、先祖からの「声」をきいたことをきっかけに治療を始めたそうです。患者の症状を夢で診断し、薬草の処方を決めているそうです。病院で治療ができない患者さんを祈りを使って治療することもあるそうです。
どんな薬を使ってる?
クリスティンさんが様々な薬を紹介してくれました!
- 不妊治療につかう薬
- 原因不明の長引く咳に使う薬(結核に効くと信じられている薬もあるそう)
- 病院での処置後も改善がみられない骨折への薬
- 植物由来のオイルを抽出後、お湯と混ぜ、押し固めたものを皮膚にのせる
- 魔除けになる薬
- 入浴の際に水に混ぜて使う。
- ビジネス繁盛の薬
- 化粧水等に入れて使うと、お客さんが増えるといわれている
森の中でとれる植物の根っこを使うことが多いそうです。
こうした薬草の効果については、科学的に証明されているものもあれば、信仰や経験に基づくものもあると思われます。
紹介してくれた様々な薬の材料

インタビューをして印象的だったこと
印象的だったのは、伝統的治療師の方々も「自分たちだけで抱え込まない」姿勢を持っていたことです。お互いの方法を認め合っていて、治療できないものは医療施設に送るなどの連携があることが驚きでした。また救急医療の研修への参加にも意欲的だったことが印象的でした。ちなみに、伝統的治療師は必ずしも親から受け継がれる世襲制ではなく、「ご先祖や精霊から選ばれた人」がなるということも興味深かったです。
「豆知識」:土を食べる文化?
ちなみに、現地の人はミネラルの補給のために土を食べる習慣があります。ローカルマーケットに行くと、タンザニアの土、コンゴの土など色々なバリエーションがあり、みていて楽しかったです。私は勇気が出なくて食べられませんでした。みなさんももし、ザンビアを訪れる機会があれば、探してみてください!

