特定非営利活動法人ロシナンテス

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結核対策から、骨折対応へ――ザンビア村落部で広がる、地域医療強化の取り組み

ロシナンテスは、ザンビア中央州チボンボ郡ムワチソポラ病院を拠点に、結核対策事業を継続しています。2023年12月には、結核の早期発見を目的としてポータブルX線装置を導入し、これまで見逃されがちだった結核患者の発見や診断体制の強化を進めてきました。

その取り組みのなかで、現地の医療者から次第に聞こえてくるようになったのが、「骨折への対応が十分にできていない」という声でした。こうして生まれたのが、2025年12月に実施した「骨折対応の研修」です。

結核事業のなかで見えてきた、もう一つの課題

ムワチソポラ病院は、チボンボ郡で唯一、X線検査が可能な病院です。

ロシナンテスでは、このポータブルX線装置導入の効果を確認するため、結核診断にとどまらず、骨折などの外傷が適切に診断・治療されているかについても、現場と協力しながら継続的に状況を確認してきました。その一環として、整形外科における受診患者数や骨折患者数について、日常的な記録を行ってきました。

約2年分のデータを現場の理学療法士とともに振り返った結果、若年層の骨折患者が多い一方で、病院を取り巻く村落部の診療所では、骨折と打撲を見分けることや、適切な応急処置が十分に行われていないという課題が明らかになりました。

骨折が疑われる患者が出ても、

  • 診療所で対応できないと判断され、そのまま様子を見る
  • 病院までの移動手段がなく、受診が遅れる
  • 伝統的治療に頼り、骨が変形してしまう

といったケースも少なくありません。

実際、ムワチソポラ病院では月平均約20人の骨折患者が来院しており、その多くが子どもや若者です。農作業や木登り、転倒など、日常生活のなかでの事故が主な原因とされています。

骨折後の処置が遅れ、手術が必要になった場合、最低でも約7万円以上の費用がかかります。
一方で、村落部の農家の月収は約1万2千円。早く診てもらえなかったことが、その後の生活に大きな影響を与えてしまう状況がありました。

このような現状を踏まえ、ムワチソポラ病院の理学療法士をはじめとする医療者が自ら課題を整理し、地域や病院傘下の診療所において骨折患者を早期に発見し、応急処置を行ったうえで、確実に病院へ搬送する流れを整える必要があるとの提案が、ロシナンテスに対してなされ、研修を実施することについて合意しました。

骨折対応研修の目的と概要

こうした課題を受け、ロシナンテスは村落部の医療従事者や地域のキーパーソンを対象に、骨折対応の研修を支援しました。

研修の目的

  • 骨折が疑われる患者を早期に見分けること
  • 安全な応急処置を地域で行えるようにすること
  • 病院への適切な紹介と、その後のフォローが途切れない体制をつくること

実施概要

  • 実施時期:2025年12月3日〜5日(3日間)
  • 実施場所:ムワチソポラ病院および周辺診療所
  • 参加者:医療従事者、村長、牧師、伝統的治療師など計26名

医療者だけでなく、住民が最初に相談する存在である村長・牧師・伝統的治療師も含めた研修設計が、この取り組みの大きな特徴です。

写真で見る、研修の様子と実際の活動内容

研修初日は、病院の理学療法士による座学から始まりました。

理学療法士による講義の様子

骨折と打撲の見分け方、骨折の症状、応急処置の重要性、放置した場合に起こりうる変形や機能障害について、参加者全員で理解を深めました。

ポータブルX線装置を使い、骨折か打撲かを確認しながら実践的に学ぶ

2日目には、実際に患者を招き、X線画像を確認しながら鑑別の練習を行いました。

その後、添木や布を使った固定、三角巾での腕の支持など、身近な物を使った応急処置を繰り返し練習しました。

地域の方々も研修にご協力くださいました

研修には地域住民にもご協力いただき、医療が「特別な場所」ではなく、地域のなかにあることを改めて確認しました。現実に即した学びの場となりました。

3日目には、診療所・地域から病院への患者搬送フローを確認。

診療所から病院へ。患者情報を共有する新たな連携フローを確認

SNSグループを活用し、応急処置の完了状況や患者情報を共有し、病院側が対応結果をフィードバックする仕組みを整えました。

参加者の声 ――「知識は力になる」

研修を受けた診療所スタッフのマリーさんは、こう話します。

「これまで骨折の患者さんが来ても、自分の対応範囲外だと思っていました。今回の研修で、適切に対応できる自信がつきました。知識は力なので、これから地域の人たちにも伝えていきたいです。」

また、講師を務めた理学療法士のティモシーさんは、

「医療者も住民も、骨折対応の知識が不足していました。今回、皆が知識と技術を共有できたことで、地域全体が前に進んだと感じています。」

と話してくださいました。

伝統的治療師や牧師からも、「病院につなぐ前の初期対応の重要性を初めて知った」「今後は地域で実践していきたい」といった声が聞かれました。

支援が、次の成果へとつながっています

研修から1〜2か月後、すでに変化が生まれています。

  • 研修に参加できなかった医療者向けの内部研修を実施
  • 18件の骨折患者が診療所で応急処置を受け、病院へ搬送
  • 病院での治療完了が地域側にも共有されるように

結核対策として導入したX線装置と、地域の人々の学びが結びつき、手遅れになる前に対応できる医療体制が少しずつ根づき始めています。

結核事業から広がる、地域医療の未来

この骨折対応研修は、結核事業の延長線上で生まれた取り組みです。
一つの医療課題に向き合うなかで、地域全体の課題に目を向け、支援を広げていく。

皆さまのご寄付が、現地で新たな学びと連携を生み、 「いのちを守る仕組み」として形になっています。

これからもロシナンテスは、結核対策を軸に、地域医療の強化に取り組んでまいります。
引き続き、温かい応援をどうぞよろしくお願いいたします。