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コラム2019.12.12

およそ20歳違う平均寿命—スーダンの医療事情を知る

こんにちは、インターンの甲谷佳之です。
本日12月12日はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ・デー!

 

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デーとは?
ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage : 以下UHC)とは、「全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態」を指します。
UHCデーは、国連が2017年に制定した、保健医療サービスの必要性を広く知ってもらうための日です!最近話題のSDGsでも、目標3の中で、達成すべき指標として定められています。

SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標です。

目標3では、新生児および5歳未満時の予防可能な死亡を根絶する、エイズ、結核、マラリアその他の感染症の蔓延を食い止める、など、いくつかの大きな誓約をしています。その中の一つが、UHCの達成なのです。これは近年の医学の進歩によって予防や治療などによって回避できるようになったにもかかわらず、現在予防可能な病気で1万6000人の子どもが命を失っているという現状があるからです。

 

目標3:あらゆる年齢のすべての人の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

そしてこの目標3の中には、13個のターゲットが含まれています。

3.1  2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を10万人当たり70人未満に削減する。
3.2  全ての国が新生児死亡率を少なくとも出生1,000件中12件以下まで減らし、5歳以下死亡率を少なくとも出生1,000件中25件以下まで減らすことを目指し、2030年までに、新生児および5歳未満時の予防可能な死亡を根絶する。
3.3  2030年までに、エイズ、結核、マラリアおよび顧みられない熱帯病といった伝染病を根絶するとともに肝炎、水系感染症およびその他の感染症に対処する。
3.4  2030年までに、非感染症疾患(NCD)による早期死亡を、予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。
3.5  麻薬乱用やアルコールの有害な摂取を含む、薬物乱用の防止・治療を強化する。
3.6  2020年までに、世界の道路交通事故による死傷者を半減させる。
3.7  2030年までに、家族計画、情報・教育、およびリプロダクティブ・ヘルスの国家戦略・計画への組み入れを含む、性と生殖に関するヘルスケアをすべての人々が利用できるようにする。
3.8  すべての人々に対する財政保障、質の高い基礎的なヘルスケア・サービスへのアクセス、および安全で効果的、かつ質が高く安価な必須医薬品とワクチンのアクセス提供を含む、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)を達成する。
3.9  2030年までに、有害化学物質、ならびに大気、水質および土壌の汚染による死亡および病気の件数を大幅に減少させる。
3.a  すべての国々において、たばこ規制枠組条約の実施を適宜強化する。
3.b  主に開発途上国に影響を及ぼしている感染性および非感染性疾患のワクチンおよび医薬品の研究開発を支援する。また、ドーハ宣言に従い安価な必須医薬品およびワクチンへのアクセスを提供する。同宣言は公衆衛生保護およびすべての人々への医薬品のアクセス提供にかかわる「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の柔軟性に関する規定を完全に行使する開発途上国の権利を確約したものである。
3.c  開発途上国、特に後発開発途上国および小島嶼開発途上国において保健財政、および保健従事者の採用、能力開発・訓練、および定着を大幅に拡大させる。
3.d  すべての国々、特に開発途上国の国家・世界規模な健康リスクの早期警告、リスク緩和およびリスク管理のための能力を強化する。

ということで、この機会に、スーダンの医療事情について簡単にまとめてみたいと思います。スーダンと日本の平均寿命から、医療の必要性を紐解いていきましょう。

 

平均寿命ランキング
日本では、1961年の国民皆保険体制が確立され、UHCを早期に達成したと言えます。その結果として2016年のWHO(世界保健機関)が発表した世界平均寿命ランキング(男女総合)では、日本は84.2歳の第1位となっています。対するスーダンは65.1歳の143位です。(※1)

この約20歳離れた平均寿命の数値の背景にはたくさんの要因がありますが、その中の1つである保険医療サービスの充実レベルの差は、平均寿命に大きく関係しています。

 

スーダンの医療事情
専門医の数が少ない、腕の良い医者が中東の国々へ出稼ぎに出てしまう、医療機器の不足やメンテナンス不良など、まだまだ課題は残されているものの、首都ハルツームでの医療は整ってきています。裕福な家庭や海外駐在員などからの需要があるからとも言えます。しかしインフラ整備が十分でない地方では、医療施設のない地域もあります。例えばロシナンテスが活動してきた、ハルツームから車で2時間の距離であるワッドアブサーレ区では、東京都と同じ面積を有し、約2万人が生活しているにもかかわらず、医療施設が1つもありませんでした。

ハルツーム州の病院の病床数は平均で 8床(人口1万対、2014年)と、州が定める病院建設基準の12床(人口1万対)を下回り、保健サービスは不十分な状況にあります。対する日本の病床数は平均で137床(人口1万対、2014年)です。人口1万人に対しスーダン8床、日本約137床と、いかに日本に比べてスーダンが少ないかが分かります。

また人々の医療に対する考え方も違います。ワクチンを有害なものとみなし、拒否する住民も少なからず存在します。こうした場合、人々に必要性について知ってもらうことに大きな労力が必要になります。

ロシナンテスの医療活動
すべての人が、最低限必要な時に医療にアクセスできるように。スーダンの村落部に「医」を届けるために、ロシナンテスは活動しています。

UHCデーを通して、医療環境が十分でない場所にいる人々のことを考える機会になればと思い、この記事を書きました。ロシナンテスでは、今後もスーダンへの医療支援を続けていきます。更なる医療環境の改善・生活環境の改善に向けて一歩ずつ進んでいきます。

 

※出典1:世界保健統計2018

※出典2:Human Development Indices and Indicators 2018 Statistical Update