特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

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2021.04.15

診療所によりよい水を届けるハフィールプロジェクト

ロシナンテスは、巡回診療を実施していたハルツーム州シャルガニール地域ワッドアブサーレ区において、3棟の診療所建設を行いました。そのうちの1棟、2018年に完成したワッド・シュウェイン村の診療所が抱える水の問題を解決し、運営を軌道に乗せるため、新たにハフィール(ため池)プロジェクトを実施します。

ハフィールで水を汲む住民たち

事業概要
●事業地:ハルツーム州シャルガニール地域ワッドアブサーレ区ワッド・シュウェイン村
●事業内容:ハフィール改修事業及び啓発活動
●受益者数:ワッド・シュウェイン診療所及び近隣住民2,000人及び家畜8,000頭
●事業費用想定:10,000,000円
●事業実施現地パートナー機関:水資源省、ハルツーム州水公社

スーダンの水事情
水が貴重なスーダンにおいて、水を確保する手段は地域によって異なります。ナイル川の水や地下水を利用できる場合はよいのですが、そのどちらも利用できない地域では雨季に貯めた雨水を利用するハフィール(雨水貯水池)が大切な水源となっています。

貴重な水源ハフィール
ハフィールは、雨季の6月~9月に降る貴重な雨水を貯水し、残りの乾季に飲料水、生活用水として活用しますが、旧タイプと新タイプの大きく分けて2種類があります。

旧タイプのハフィールは、フェンスや水を浄化するシステムがなく、大きな水溜まりのようなものです。動物の侵入を防ぐフェンスがないために、住民に加えて牛、ロバ、ラクダ、ヤギ、羊などの家畜の日常的な水飲み場となり、動物の排泄などで水が汚染されます。

また、水を浄化するフィルターなどもないため、人々は汚染された水を飲むことになります。見るからに濁度が高く、かつ異臭を放っている水であっても、他に水を確保するすべがないのです。

できる限りの浄水を試みる女性

改良が重ねられた新タイプのハフィールは、動物がハフィールに侵入できないようにフェンスで囲われ、砂ろ過フィルターが設置されているものが多いです。これらの設備があるだけでも、水質は格段に向上すると言われています。今回ロシナンテスは、現在の旧ハフィールを改修することにより、診療所や周辺の人々が清潔な水を利用できるようにし、ひいては診療所の運営を軌道に乗せることを目指します。

課題
世界では、7億8,500万人、全人口のおよそ10%が清潔な水を利用することができません。スーダンにおいてその状況はさらに厳しく、人口の約40%、村落部では48%となります。

国土の大半が砂漠地域であるスーダンは、年間を通じて雨が少なく、南スーダンとの国境付近の年間降水量は最大600ミリ程度ありますが、首都ハルツーム付近では約150ミリ、エジプト国境付近では25ミリ以下と北上する程少なくなります。東京の年間平均降水量が1500ミリですので、比較するといかに乾燥した地域であるかが想像しやすいかと思います。

ロシナンテスは2016年~2018年にハルツーム州シャルガニール地域ワッドアブサーレ区の3つの村で診療所を建設し、すべて保健省へ引き渡しました。しかしワッド・シュウェイン村の診療所は、運営にあたっていくつかの課題を抱えています。そのうちの一つが「水」の安定供給でした。この水に関する課題を解決したいと考え、2018年に井戸の掘削および給水所の建設を計画し、村内の8か所で地質調査を実施しました。しかし、結果的にこのエリアに地下水がないことが判明し、断念していました。

ハフィール改修により、安全な水を届ける
ワッド・シュウェイン村の人々の水源は、給水車での他の村からの水の購入か、診療所付近にあるハフィール利用のいずれかであることが分かりました。ハフィールは、村のほぼ同地点に2つ存在しており、1つが旧タイプ、もう1つが新タイプのものです。本来、フェンスやフィルターシステムの完備された新タイプのハフィールが利用されるはずと思われますが、新タイプのハフィールは、建設の際に岩盤が見つかり必要な深さまで掘ることができず、建設を担った水資源省がそのまま放置していたため、機能していない状態です。そのため人々は、汚染が著しい旧タイプのハフィールが利用されていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

写真は、旧ハフィールから水を汲む女の子のようすです。水は茶色く濁っています。村の人々は、「汚い水を飲んでいることはわかっていても、ここには他に選択肢がない」「この水を飲んでいて、子どもがよくお腹を壊してしまう」と話していました。ハフィールの水を自宅に持ち帰った後、煮沸など水処理を行わずにそのまま飲み、結果的に慢性的な下痢など、この水が原因となっている病気が多く発生している状況でした。 

様々な専門家の意見を鑑み、既存のハフィールの改修を行うことで水の安全性を高められることがわかりました。専門家と力を合わせて改修事業を実施し、この地域の人々に安心して飲める水を届けます。本プロジェクトを通じて、ワッド・シュウェイン村および周辺の住民2,000人が改善された水を利用することができるようになります。

清潔な水で顔を洗い、喜ぶ子どもたち

作業内容
再掘削および汚染された土砂の除去
旧ハフィールと新ハフィールの接続(トラフ)
●フェンス設置
●フィルター設備 / 水タンクの移動
●Inlet/Outlet設備
●ソーラーパネル設置
●家畜用水飲み場設置

期待される効果
●安全で清潔な水へのアクセスができる住人、家畜数が増加する
●地域内で水衛生の知識が身に着いた住人が増加する
●水委員会を中心とした地域住民が、改修後のハフィールのメンテナンス、運営を継続的に行えるようになる

プロジェクトの成果が続くように
本事業では、改修したハフィールを継続的に利用してもらえるよう、地域住民にハフィールの運営やメンテナンスのトレーニングを実施します。また、家庭での水処理に関する健康教育を行い、人々の健康への意識向上にも貢献していく予定です。