ザンビアで5日間の妊娠・出産に関するケアの研修を行いました!
2026年6月8日から12日までの5日間、チコンコメニ診療所とムワプラ診療所で働くスタッフを対象に、妊娠・出産に関するケアの研修を行いました。今回参加したのは、日頃お産に携わる看護師、助産師、保健師など6名です。
お母さんと赤ちゃんの命を守るために、妊娠・出産に必要な知識や技術を、講義だけでなく、実際に体を動かしながら学びました。今回は、5日間でどんなことをしたのか、ご紹介します!
1日目 「お母さんを大切にするケア」とお産について学ぶ
初日は、まず「尊厳ある母子ケア」について学びました。
尊厳ある母子ケアとは、妊婦さん一人ひとりの気持ちや希望を大切にし、安心してケアを受けられるようにする考え方です。例えば、妊婦さんに分かりやすく説明すること、本人の気持ちや希望を聞くこと、相手を傷つけるような言葉や態度をとらないことも大切なケアです。
講義だけではなく、参加者が医療スタッフ役と妊婦役に分かれ、実際の場面を想定してコミュニケーションも練習しました。
後半は、お産の進み方や妊婦さんの状態をどのように観察するのかを確認し、パルトグラムという記録用紙の使い方も練習しました。パルトグラムは、お産の進み具合やお母さん、赤ちゃんの状態を確認するものです。記録を確認することで、お産が順調に進んでいるか、注意が必要な状態になっていないかを判断できます。

2日目 出産後の「大量出血」にどう対応する?
2日目のテーマは、産後出血です。
赤ちゃんが生まれたあと、お母さんが大量出血することがあります。出血が多いときには、早く状況を確認し、必要な対応を行うことが大切です。そこで、対応を覚えやすく整理した「EMOTIVE」という方法を学びました。
EMOTIVEは、
- E:Early detection(早期発見)
- M:Massage(子宮マッサージ)
- O:Oxytocic(子宮を収縮させる薬)
- T:Tranexamic acid(出血を抑える薬)
- I:IV(点滴)
- E:Examination(診察)
の頭文字をとったものです。
それぞれ何をするのかを講義で確認したあと、実際の場面を想定して練習しました。
また、どのくらい出血しているのかを正しく測る方法についても学びました。出血量を目で見て「これくらいかな」と判断するのではなく、できるだけ正確に測ることが大切です。

3日目 赤ちゃんを助ける「新生児蘇生」
3日目は、今回の研修の中でも特に重要なテーマの一つ、新生児蘇生について学びました。
まず講義で、新生児蘇生の流れを確認して、人形を使って実技練習を行いました。
多くの赤ちゃんは、生まれてすぐ自分で呼吸を始めます。しかし、すべての赤ちゃんがすぐに呼吸を始められるとは限りません。そのようなとき、スタッフは赤ちゃんの状態をすぐに確認し、必要な処置を行う必要があります。
「赤ちゃんが生まれました。でも、呼吸をしていません。どうしますか?」
といった実際の緊急事態を想定したシナリオトレーニングも行いました。
緊急時には、正しい知識だけでなく、落ち着いて行動することが大切です。また、状況や赤ちゃんの状態や必要な対応を、短時間で正確に伝える必要があります。
そこで、緊急時に必要な情報を短く、分かりやすく伝える方法として、「SBAR(状況・背景・評価・提案)」という報告方法も練習しました。

4日目 実際の病院で実習!
4日目は、ムングレ・ミニ病院へ行き、これまでの研修で学んできたことを、実際の臨床現場で確認しました。
尊厳ある母子ケアや妊婦さんへの診察、パルトグラムの活用、お産の進みを促すための運動、産後のお母さんの観察、産後出血への対応などを確認しました。
研修では人形を使って練習していましたが、臨床現場では一人ひとり状態が違います。
実際の患者さんを前にすることで、研修で学んだ知識や技術を、現場でどう生かすのかを考える貴重な機会となりました。

5日目 けいれんへの対応と最後の実技テスト
最終日のテーマは、けいれんとその対応です。
妊娠中に血圧が高くなる病気が重症化すると、けいれんなどを起こすことがあります。そのような緊急事態が起きたときに、どのような順番で対応するかを学びました。決められた手順を確認しながら、お母さんの状態を観察し、必要な薬を準備・投与する方法などを練習しました。
そして、5日間の最後にはOSCE(客観的臨床能力実践)を行いました。
OSCEは、実際の医療現場を想定した実践です。患者さんへの声かけや必要な処置など、研修で学んだことを臨床の場で活用できるか確認しました。
参加者は一つひとつ思い出しながら、真剣に取り組んでいました。

5日間で、どんな変化があった?
研修の前後でテストを行ったところ、参加者の知識の向上が確認されました。特に大きな変化が見られたのが、新生児蘇生です。
研修前は65.5%だった正答率が、研修後には92.2%まで上がりました。
実際に人形を使って練習したり、緊急時のシナリオを繰り返したりしたことで、知識だけでなく、対応の流れについても理解が深まったと考えられます。
そして、研修の数日後……
研修に参加した助産師さんから、学んだことが実際の現場で生かされた2つの事例について報告がありました。
一つ目は、お産がなかなか進まなかった事例です。パルトグラムを使ってお産の進み具合を確認したところ、赤ちゃんの頭が十分に下がっていないことが分かりました。そこで、研修で学んだスクワットなどの運動を取り入れたところ、お産が進んだそうです。
二つ目は、赤ちゃんが生まれたときに呼吸を始めなかった事例です。助産師さんは、研修で練習した新生児蘇生の手順に沿って赤ちゃんの状態を確認し、必要な処置を行いました。その結果、赤ちゃんは自力で呼吸を始めました。助産師さんは、「研修前は焦ってしまっていたけれど、今は何をするべきか分かるので、落ち着いて対応できた」と話してくれました。
研修で学んだことが、実際の現場で生かされた瞬間でした。
5日間の研修から、これからの活動へ
今回の研修では、講義だけではなく、実技、ロールプレイ、シナリオトレーニング、病院実習など、さまざまな方法で学びました。
一方で、5日間の研修だけでは、十分に練習することが難しい技術もありました。参加者からは、「もっと実習や練習の時間がほしかった」という声も聞かれました。
今後は、定期的に研修を開催し、学んだことを繰り返し練習できるようサポートしていく予定です。
研修で学んだことが実際の現場で生かされ、一人でも多くのお母さんと赤ちゃんの命を守ることにつながるよう、これからも活動を続けていきます。

