ロシナンテス設立20周年に寄せて― 共に歩む、未来への決意 ―

ロシナンテスは創立20周年を迎えました。
この節目を迎えることができましたのも、ひとえに長年にわたり支え続けてくださった皆様のおかげです。これまで関わって下さった全ての方々に、心より深く感謝申し上げます。
「目の前のひとりを救いたい」から始まった
大使館勤務時代、スーダンで目にした光景が原点です。病院には患者があふれ、建物に入りきらない人々が、木の下でひとつのベッドに複数人が重なって横たわっていました。その現実を目の当たりにしたとき、「目の前のひとりでも救いたい」という思いが胸に湧き上がりました。そして外務省を辞し、スーダンで医療支援に取り組むことを決意しました。
仲間とともに築いた20年
当初は、自分ひとりでもできることをすればよいと考えていました。しかし実際には多くの仲間の存在に支えられました。共にスーダンへ渡った仲間、日本で団体設立に尽力してくれた仲間。それぞれの想いが重なり、2006年にNPO法人ロシナンテスが誕生しました。ひとりの力は小さくとも、集まることで大きな力になる。その信念が「ロシナンテス」という名前に込められています。

支援を超えて、共に生きる
最初の活動地であるガダーレフ州ハサバッラ村では、当初「支援に来てもすぐにいなくなる存在」と見られていました。しかし関わり続ける中で信頼が育まれ、「ロシナンテスは我々と同じ部族だ」と言っていただけるようになりました。私たちは支援する側とされる側という関係を超え、共に生きる存在となりました。村人が亡くなれば共に涙を流し、若い二人が結ばれるときには皆で祝い、命が誕生すれば共に喜ぶ。この日々の積み重ねが、何にも代えがたい絆を築いてきました。

内戦という困難
しかし、スーダンの情勢は次第に厳しさを増していきました。南スーダン独立以降、経済悪化やクーデタ、政情不安を経て、2023年には内戦へと突入しました。自衛隊機によって日本人スタッフや私自身の命は救われましたが、現地では今も多くの人々が苦しんでいます。すぐに手を差し伸べることができない現実に、無力感と葛藤を抱え続けてきました。
内戦の状況を見極めながら支援再開の準備を進め、現在では難民キャンプを含む地域で、エコー診断装置やポータブル・ヘルス・クリニック(PHC)を活用した巡回診療を開始しています。厳しい環境の中でも、できることを一つずつ積み重ねていくしかありません。
未来へつなぐ、新しい挑戦
一方で、新たにザンビアでの支援も開始しました。2019年より、日本の大学や企業と連携し、デジタル技術を活用した医療支援を推進しています。AIによる診断が可能なポータブルX線装置や、エコーによる妊婦健診など、新たな医療のしくみが実現しつつあります。
さらにスーダンに続きザンビアでも、ポータブル・ヘルス・クリニックの導入準備を進めています。この研修にはバングラデシュからの専門家に協力いただいています。日本のみならずアジアと連携しながらアフリカを支える新しい形に、大きな可能性と希望を感じています。

次の10年へ ― 新しい医療の形
この20年を振り返る中で、変わらないものがあります。それは「現地の人々と共に歩む」という姿勢です。外から一方的に与える支援ではなく、同じ目線に立ち、共に考え、共に築いていく。その信念は、これからも決して変わることはありません。
一方で、変わっていかなければならないものもあります。それは支援の形です。これまでのように医師個人の力に頼るだけでは限界があります。今後は、現地の人々が主体となる医療の仕組みづくりが不可欠です。AIやICTといった新技術はその可能性を大きく広げるものです。医療資源の乏しい地域だからこそ、こうした技術が大きな恩恵をもたらすと確信しています。
これからの10年は、これまで以上に急速な技術革新が進む時代となるでしょう。その変化を力に変え、日本、そしてアジアの国々と連携しながら、アフリカの地で新しい医療の形を切り拓いていきたいと考えています。
「堅忍不抜」
今、私はスーダンに身を置き、現地の人々と内戦の苦しみを共にしています。しかし、いつの日か内戦が終結し、新しい医療によって人々が健康に生きられる未来を実現したいと強く願っています。「堅忍不抜」(※)の精神を胸に、これからも一歩一歩、着実に活動を続けてまいります。
最後に、これまでロシナンテスの活動を支え続けてくださった皆さまに、改めて深く感謝申し上げます。今後とも変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
※堅忍不抜(けんにんふばつ)…つらく苦しいことがあっても、がまん強く意志を貫くこと
認定NPO法人ロシナンテス
理事長 川原尚行
