兄弟のような親しみと、平和への願いに満ちた別れ――設立20周年の節目に日本を訪問して
ロシナンテス設立20周年にあわせて、9月に来日したスーダン人スタッフの一人、ラビアが、日本での滞在を振り返るブログを寄せてくれました。ラビアはロシナンテスのスーダン事務所ができて最初に採用をした現地スタッフの1人で、長年ロシナンテスの活動を支えてくれています。

2026年、ロシナンテスはスーダンで設立されてから20周年を迎えました。
この節目を記念して、私たちは2026年9月1日から23日まで日本を訪問しました。各地の講演会や大学、地域の行事などを訪れ、ロシナンテスがスーダンで歩んできた20年間と現在の活動についてお伝えするとともに、これまで活動を支えてくださった日本の支援者、パートナー、大学、地域の皆さんと交流しました。
今回の訪日は、2023年4月に始まったスーダンの紛争による人道危機が続く中で行われました。
紛争は、住民や家族、地域社会の暮らしだけでなく、保健医療や教育、生計にも大きな影響を及ぼしています。そして、人道支援に携わる私たち職員やその家族もまた、同じ困難の中で生活しています。
だからこそ今回、日本の皆さんに直接スーダンの「今」をお伝えできたことには、大きな意味があったと感じています。
日本各地で伝えた、ロシナンテスの20年とスーダンの今
今回の訪問では、北九州、長崎、熊本、福岡、東京、大阪、岡山などを訪れ、講演会や大学での発表、支援者の皆さんとの交流の機会をいただきました。

ロシナンテス創設者・理事長の川原尚行医師からは、20年間の組織の歩みや、地域社会とともに進めてきた保健医療、水、教育、母子保健などの活動について紹介しました。また、2023年4月に戦争が始まってから、スーダンの人々の暮らしがどのように変化したのか、人道支援の現場がどのような課題に直面しているのかについてもお話ししました。
私たちスーダン人職員からは、自分たち自身が経験した戦争についてお伝えしました。
住んでいた地域から避難し、安全を求めて移動したこと。エジプトで生活したこと。そして再びスーダンへ戻り、厳しい状況の中で活動を再開したこと。
人道支援に携わる職員も、支援を必要としている地域の人々と同じように、戦争の影響を受けながら暮らしています。
ニュースや報告書だけでは伝わりにくいスーダンの現実を、私たち自身の言葉で日本の皆さんにお話しできたことは、今回の訪問で特に大切な経験となりました。
九州大学では「プライマリ・ヘルス・ケアのデジタル化――母子保健をモデルとして」をテーマに発表し、医療へのアクセスが難しい地域で、デジタル技術をどのように活用できるのかを日本の医師や研究者、学生の皆さんと考えました。

今回の訪問では、長年ロシナンテスを支えてくださっている皆さんと直接お会いすることもできました。20周年という節目に、これまでスーダンとロシナンテスに関心を寄せ、活動を支えてくださった方々に直接感謝を伝えられたことを、とてもうれしく思います。

またそれぞれの場所で多くの方がスーダンの状況に耳を傾け、質問を寄せてくださったことを、とてもうれしく思いました。
北九州の子どもたちとの交流
北九州では、小学校を訪問する機会もありました。

子どもたちは、スーダンや私たちの経験について、好奇心いっぱいの質問をたくさんしてくれました。自分の考えを伝えながら、私たちの話にも真剣に耳を傾けてくれたことが印象に残っています。
そして、子どもたちが自分たちで作った記念品を私たちにプレゼントしてくれました。
そこには友情や敬意、温かなもてなしの気持ちが込められていて、忘れられない思い出になりました。

チャリティーウォークで感じた、日本の地域の温かさ
北九州では「チャリティウォーク」にも参加しました。
地域の皆さんと一緒に過ごし、会話を交わしながら、日本の地域社会の日常に触れることができました。私たちからも、スーダンの文化や日々の暮らしについて紹介しました。
講演会とはまた違った形で、日本とスーダンの人々が直接交流できた、とても楽しい時間でした。

日本の皆さんとのつながり
東京では駐日スーダン大使の公邸も訪問しました。大使は、日本政府と日本の皆さんによる、保健医療、教育、水など多分野にわたる長期的なスーダン支援について触れ、ロシナンテスへの支持を表明しました。
また、今回の滞在中には、地域の方々との交流や文化施設などへの訪問を通じて、日本の文化や伝統、日々の暮らしに触れる機会もありました。
こうした一つひとつの経験を通して、日本とスーダンの間に長い時間をかけて築かれてきたつながりを、改めて感じることができました。

20年間の経験から学んだこと
ロシナンテスはこの20年間、保健医療、水、教育、母子保健など、地域のニーズに応じた活動に取り組んできました。
その中で私たちが学んできたのは、地域の人々との信頼関係を築き、実際のニーズに耳を傾け、状況の変化に合わせながら活動を続けることの大切さです。
2023年4月以降の戦争によって、スーダンの状況は大きく変わりました。多くの人々が避難を余儀なくされ、保健医療をはじめとする基礎的なサービスも大きな影響を受けています。
ロシナンテスも、現地の状況や利用できる資源に合わせて活動を変えながら、できることを続けてきました。
長期化する危機の中で活動を続けるには、現地職員の存在、地域社会との信頼関係、そして長年支えてくださっている支援者や関係機関とのパートナーシップが欠かせません。
また、緊急時の支援だけでなく、その先にある復興や保健医療などの基礎的なサービスの再建まで考えていく必要があります。
20年間の経験は、これからの活動を考えるための大切な土台になっています。
20周年を、新たな出発点に
設立20周年は、一つの段階の終わりではありません。
これまでの経験を生かしながら、スーダンで変化し続ける人道・保健医療上のニーズに応えていく、新たな出発点だと考えています。
これからもロシナンテスは、保健医療、水、教育、母子保健などの活動を続けるとともに、技術や研究、大学の専門知も生かしながら、より良い支援の形を模索していきます。
そして、日本とのパートナーシップも、人道支援や学術交流を続けていくための大切な力です。

日本の皆さん、本当にありがとうございました
2026年9月23日、私たちは日本を離れ、スーダンへ向かいました。
今回の訪問を通じて、ロシナンテスの20年間の歩みを振り返るとともに、現在のスーダンの状況を私たち自身の言葉で日本の皆さんに伝えることができました。
20年間の活動は、私たちにとって大切な経験であると同時に、これからへの責任でもあります。
スーダンから日本へ、日本からスーダンへ。
信頼、連帯、そしてともに取り組むことを大切にしたパートナーシップが、これからも続いていくことを願っています。
「一人はみんなのために、みんなは一人のために」
日本を離れるときは、兄弟のような親しみと、平和への願いに満ちた別れとなりました。
スーダン全土に平和が戻ることを、心から願っています。
戦争の前も、戦争中も、そして戦争が終わった後も、ロシナンテスがスーダンとスーダンの人々のために続けてきたこと、そして今も続けていることを、私たちは決して忘れません。
日本の皆さん、心からありがとうございました。

