特定非営利活動法人ロシナンテス

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コラム2023.08.17

平均寿命は?主な死因は?ザンビアの健康事情

ロシナンテスは、ザンビアとスーダンで「医」を届ける支援を行っています。

しかし、そもそも両国での健康事情や医療体制はどうなっているのか、ご存じない方も多いかもしれません。日本では最近「人生100年時代」なんて言葉を耳にすることも増えましたね。しかし遠く離れた地、ザンビアの人々にこの言葉はどう聞こえるのでしょうか。

こちらのブログでは、改めてザンビアの健康事情についてご紹介したいと思います。

「紹介」、「逆紹介」…?リファラル制度とは

まず、ザンビアの医療制度についてです。

ザンビアでは「リファラル制度」を採用しています。

リファラル制度とは、最初は地元の病院へ行き、必要に応じてより大きく設備が整っている病院へ紹介されていく仕組みのことを言います*。逆に、大きな病院での治療後回復に向かっている場合は、地方の小さな病院へ移されて回復の支援を受けることもあります*

リファラル制度のメリットは、小さな病院から大きな病院へ移る「紹介」、その逆の「逆紹介」が機能することで、それぞれの規模の病院が各々の役割を果たせることです。

しかし裏を返せば、首都ルサカから離れた地方ではいまだ十分な医療体制は整っていないとう現状が見えてきます。現にザンビアの村落部では妊娠関連の死亡数が都市部に比べて約2倍あったとする調査結果も出ています*1。

ザンビアの平均寿命は?

WHOによると、ザンビアの2023年の平均寿命は男性は58年、女性は64年です。寿命は2000年以降特に著しい伸びを見せており、今後も伸びていくものと推測されます。

一方、五歳未満の死亡率は1000人に対し50人で、アフリカの平均よりはやや下回るものの、ザンビアが低中所得国であることを踏まえると、依然として高い傾向にあります。

どんな病気が主な死亡原因になっているのか?

次に、ザンビアの主な死亡原因として挙げられる病気についていくつかご紹介します。

マラリア

皆さんも一度は耳にしたことのある病気かと思います。

マラリアは、マラリア原虫を持っている蚊に刺されることで感染します。

発熱、寒気、頭痛、嘔吐、関節痛、筋肉痛だけでなく、脳症、腎症、肺水腫、重症貧血など、さまざまな合併症がみられる場合もあります。

ザンビアで発症するマラリアはほとんどすべてが熱帯熱マラリアで、発症早期に治療を開始しないと重症化し、死に至ります。

インフルエンザ

亜熱帯気候のザンビアでもインフルエンザはあります。流行時期は涼しい乾季(5~8月)で、確定検査は行われないことが多いため、見逃されてしまうことがあります。インフルエンザは健康な人であれば一週間ほどで治る場合が多いですが、高齢者や子どもがかかると深刻さが増します。また、インフルエンザは強い感染力を持つため流行しやすいことも問題です。

エイズ

ザンビアでは、年間43000人(15~59歳)がHIVに感染していると考えられています。この数字は2022年時点での日本での累積HIV感染者数、34,407人を上回っています。

HIVは性的感染、血液感染、母子感染によって感染します。発症=必ず死ぬ病気ではありませんが、HIVに感染すると身体の免疫力が下がることがあるため、色々な病気にかかりやすくなってしまいます。今のところ完治できる治療薬はありません。よって、新規感染者数を減らしていくためにはより充実した性教育、診断、治療の必要性があります。

ザンビアの母子健康事情

ザンビアでは妊産婦と五歳未満の死亡率は近年低下してきているものの、新生児死亡率の低下があまり見られません。ザンビアではインフラの老朽化や不十分な設備、サービスへのアクセス、医療体制といった点から健康が妨げられています。特にザンビアでは病院での出産が推奨されているにも関わらず、地元に診療所がないことから自宅出産をする妊婦さんも多くいます。さらに、出産においては出産時だけはなく出産前の妊婦検診も大切です。例えば、もしお母さんがHIVに感染していることが初期に分かれば赤ちゃんへの感染リスクも減らすことができます。日本での妊婦検診回数は14回ですが、ザンビアでは平均5,6回と少なく、ザンビアで制定されている目標8回に届いていません。

また、妊産婦の死因の上位として重度の出血(主に出産後)、感染症、分娩による合併症、安全でない中絶などが挙げられます。 これらの死因は適切な医療とケアでできるだけ未然に防ぎ、減らしていくことが可能です。

2017年時点では、日本での妊産婦の死亡数は10万人当たり5人、対してザンビアでは213人と、約43倍もの差があります*2。日本での新生児死亡率は、2021年時点で1千人あたり1人、ザンビアでは25人となっています*3。

ザンビアのような低中所得国では、全出産の8割未満しか訓練された助産師、医師、看護師らによる恩恵を受けることができず、医療従事者や診療所の不足、医療制度における責任の欠如などが妊産婦の健康を脅かしています。

これから求められること

ザンビアにおいて、子どもと女性の健康を守るためには安全に出産できるシステムと設備の確保が必要です。ロシナンテスは、母子の健康を守るためにザンビアでマザーシェルターの事業に取り組んでいます。マザーシェルターとは出産前のお母さんたちが検診を受けたり、出産に備えて待機できる場所です。診療所が家から遠い地域にある村にマザーシェルターを建設し、母子の命を守るための支援を行っています。マザーシェルターにはお母さんだけでなく家族もしばらく滞在できる環境も整えており、家族みんなで出産に備えることもできます。そして、この村でのマザーシェルターの運営が、現地の人たちの手によって回せるようになっていくことが、ロシナンテスの望む「支援」のかたちです。

*1) Rural-urban differentials in pregnancy-related mortality in Zambia: estimates using data collected in a census https://pophealthmetrics.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12963-015-0066-9

*2) Maternal mortality in 2000-2017 https://cdn.who.int/media/docs/default-source/gho-documents/maternal-health-countries/maternal_health_jpn_en.pdf