特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

ロシナンテスからの活動情報をご案内します。

  1. HOME
  2. 活動報告ブログ
現地の文化生活2022.11.24

催涙ガス弾とドーナツ屋さんのバラ #スーダン情勢

こんにちは、現在夫の川原尚行に帯同し、スーダンで生活中の川原佳代です。今日は、デモがあった日の生活についてご紹介したいと思います。

デモの日は外出を控える、が基本だが…

11月のある木曜日、ロシナンテスのスーダン事務所から電話があり、「大規模なデモが予定されているようで、ナイル川にかかる橋が封鎖され、学校も休校になっているので、安全管理のため在宅を」と勧められました。

昨年の軍事クーデターから1年となる10月25日以来、何度かデモがあり、家から黒煙が見えたり、催涙ガスや発砲音を聞いたりと、これまで経験したことのない恐怖を感じることがあります。その日も夕方5時頃までは、催涙ガス弾の音が我が家にも響いていましたが、日の入り時のお祈りを告げるアッザーンがモスクから流れてくると、発砲音がしなくなり静かになりました。そして夕方6時には日も暮れ、夜を迎えていました。

その日は他団体の人とレストランで会食の予定があり、危なくないかと心配でしたが、デモが落ち着いたことを確認できたので大丈夫だろうということで出かけました。ロシナンテス事務所近くでたまたま会った現地スタッフの1人は、風で流れてきた催涙ガスで具合が悪くなったということでしたが、彼らも安全を確認の上出かける様子だったので、安心しました。

会食の場所は「モナリザ」というローカルレストラン。レストランでは、多くのスーダン人が食事を楽しんでいました。1時間ほど前、私はデモの心配をしていたのですが、ここではすでに楽しそうに食事をしている人の姿があります。まるで狐につままれたような感じです。

羊料理がおいしいと評判のお店「モナリザ」の食事

ドーナツ屋さんの一角でバラを売る

レストランで食事をした後、ザラビアという美味しい揚げドーナツのおすすめの店があるということで二次会に行きました。その店には若者たちが所狭しと椅子を並べて集まり、ドーナツを片手に楽しそうにお茶をしています。

居酒屋のような光景ですが、飲んでいるのはお茶やコーヒーです

スーダンにはお酒を飲める場所がほとんどありません。その代わり昼夜を問わず、路上のあちこちにコーヒーやお茶を楽しめるところがあります。このお店は、ローカルなお茶やさんをさらに進化させた感じで、日本の居酒屋のような賑わいを見せていました。

彼らに混じって話を楽しんでいると、お店の一角で、ヨーロッパで見るような光景に出会いました。とても綺麗な顔立ちの女性が、バラの生花を売っています。スーダンの女性は人前では髪を隠すのが習慣になっていますが、その女性はスカーフを被らずに長い髪を靡かせていました。翌日、スーダンの友人にその話をすると、彼女はスーダンの若者の間では有名らしく、紅海に面した港町ポートスーダン出身の人でネットでも検索できるよとすぐにスマートフォンで画像を見せてくれました。

薔薇の生花を売っている女性

デモを警戒した在宅ワークで始まり、ドーナツやさんでバラを買って終わる

私たちの話の中でも催涙ガスが話題となりました。デモの激しい地域に住む人によると、催涙ガスが撒かれる場所では、ゴーグルやマスクが有効なようです。普段はマスクをしている人はほとんど見かけないようですが、デモが始まり治安維持部隊によって放たれた催涙ガスが蔓延するようになると、突如としてマスクを売る人が現れてきて、道ゆく人たちはマスクをして歩いているとも聞きました。

デモに備えて、在宅で始まった1日。最後はドーナツ屋さんの一角で花を買ってプレゼントしてもらい、1日が終わりました。

「スーダンでデモ!」と聞くと、「スーダンは大丈夫?」と心配になりますよね。その日に、ローカルレストランやドーナツ屋に行っていたと聞いて、「え〜っ?」と驚かれている方が多いと思います。私も驚いた人の1人です。ドーナツ屋さんの若者たちを見ていると、夕方の催涙ガス弾の音は幻だったのではと思ってしまいますが、どちらも今のスーダンにあるものです。

「デモ」というだけで、国のすべてにマイナスイメージに抱いていましたが、視野を広げて街の様子を見てみると違う一面が見えてきます。物事は一部だけではわからないということを肌で感じました。