特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

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巡回診療2019.12.05

ハルツーム州で取り組んだ2年8ヶ月の巡回診療の成果とは?

社会インフラが十分でないスーダンでは、医療施設のない地域が多く存在します。こうした場所では、たとえ病気になっても適切な診療を受けることができません。

そこでロシナンテスは、医療サービスチームが車で約29の村を回る巡回診療の支援を行いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

55,776人に医療を提供できた!

まずは、どれだけの人を診療できたかを見てみます。
しっかり記録をとれている2014年10月から2017年8月で、延べ55,776の住民に医療を提供できました。
内訳として、一般診療が6,209人、検査が3,626人、ワクチン接種が12,278人、成長モニタリングが24,552人、産前検診が7,411人、産後検診が1,700人です。母子保健に関しては、フォローした例はこの期間で1,695例となりました。

月1回の巡回診療ですが、車のメンテナンスを含め州保険省と共同でしっかり管理を行ったことで、特に支障なく毎月の巡回診療を行うことができました。(この「毎月行う」という当たり前のようなことも、スーダンではとても難しいのです。)

 

活動中の妊産婦死亡はゼロ 乳児死亡も減少

母子保健の活動では、妊婦さんの段階から赤ちゃんを産むまで一連の流れをフォローしていきますが、これまでは記録を取るということがされていませんでした。必要性を理解してもらい、記録を残していくことで次のような結果となりました。

期間中に妊産婦の死亡はありませんでした。乳児死亡数はこちらのグラフにある通り、四半期ごとの乳児死亡数が期間を通じて減っていくこととなりました。

乳児死亡を避けるためには、母親の健康状態や栄養状態をよい状態に保てるかどうかが大きく影響しますので、乳児死亡を減らすほうが妊産婦の死亡を減らすより時間がかかるのはある意味自然と言えるのかもしれません。

 

グループディスカッションで得られた満足度とは

住民がこのサービスに対して満足してくれないと、病院や診療所に寄り付かなくなってしまうため、私達は住民からの満足度も重視していました。

ただ、医療サービスに満足しましたか、という質問では、単純に「病院に行ったら先生が話を聞いてくれたから満足!」、「先生がかっこよかった!」といった声もあがります。医療の質に対する満足なのか、医療に対して前向きになれたということなのか、それ以外の要因なのか…上記の回答だけでは、サービスの満足度調査としては不十分です。

そこで、満足度の調査については、ハルツーム州の保健省や研究部門と議論を重ねました。「住民間で議論し、細かい文脈も含めたデータを取ることが重要でないか」との助言もあり、5つの村で巡回診療についてのグループディスカッションを行い、満足度を評価することにしました。その結果、

  • 事業についてはほぼ満足している

という回答が、ほぼすべての参加者から得られました。一方で、

  • 巡回診療の回数を増やしてほしい
  • 巡回診療に来る日時を事前に教えてほしい
  • より高度な医療を提供してほしい

などの要望もいただくことができました。良い評価が得られたと言えるのですが、人もお金も限られる中で今後どこまで要望に応えていくことができるかは、まだまだ議論の余地があると言えるかもしれません。

 

巡回診療をさらに広げていくために
一定の成果を挙げたこの事業は2017年をもって、ハルツーム省保健省に引き渡しました。持続可能性を追求したとき、最終的にスーダン政府が自主的に地域の方々と協働して運営していくのが理想と考えるからです。

ハルツーム州の郊外には、まだ医療サービスが行き届かない地域がたくさんあります。また、他の州ではさらに過酷な環境で生活している人たちがいます。今までの経験を活かし、新たな地域での巡回診療を検討していきます。