ザンビアで結核診断の質を高めるために ― 蛍光顕微鏡研修を実施しました
こんにちは!ロシナンテスの相葉とインターン中の医者の安藤です。今回は、ロシナンテスがザンビア中央州で取り組んでいる結核対策事業と、その一環として実施した「顕微鏡トレーニング」の様子をご紹介します。

ザンビアで続く結核との闘い
ザンビアは結核の高負担国の一つであり、現在も結核は主要な死亡原因の一つとなっています。
特に、農村部ではX線(レントゲン)装置を備えた医療施設が限られており、多くの住民は診断のために都市部まで長距離を移動しなければなりません。一番近くの都市でも、デコボコの道を何時間もかけて移動しなくてはいけない地域では、体調が悪くても、長距離移動や交通費の負担を考えて症状を我慢してしまうことが多くあります。その結果、診断の遅れや重症化につながるケースも少なくありません。
ロシナンテスは2023年から中央州チボンボ郡とチサンバ郡という医療へのアクセスが乏しい地域でポータブルX線装置4台を導入し、1日でも早く結核が診断できる医療環境の整備に取り組んできました。
結核対策に必要な活動は、ポータブルX線のような機材を整備した後も続きます。患者さんを正しく診断し適切な治療につなげるために、それらの機材や検査を使いこなせる医療従事者を育成することもロシナンテスの大切な活動なのです。

地域で使える検査を組み合わせて結核を診断
医療資源の限られた地域では、必ずしも全ての検査ができる訳ではありません。そのため、その地域で利用可能な検査を組み合わせて、結核の患者さんを見逃さず、できる限り正確に診断できるようにすることを目指しています。
ザンビアでは現在、WHOの推奨するGeneXpertと呼ばれるPCR検査が結核の確定診断のために使われています。この検査では、患者さんから採取した痰(たん)を機械で分析します。患者さんの痰から結核菌の遺伝子を検出することで、結核を発症しているのかを判定します。しかしこの検査だけで全ての患者さんを診断することは難しく、また住んでいる場所によっては、この検査を受けられない患者さんも数多くいます。

ロシナンテスが導入しているレントゲン検査では、X線を使って肺の画像を撮影し、結核が疑われる影がないかを確認します。レントゲン検査の強みは、結核かもしれない患者さんを見逃しにくい(感度が高い)という特徴があります。ロシナンテスが導入しているポータブルX線装置は、GeneXpertのような結核の診断ができる大きな病院へアクセスができない地域で、結核が疑われる患者さんを早期に見つけるために活用されています。
今回のトレーニングのテーマである顕微鏡検査は、患者さんが咳とともに出した痰を顕微鏡で調べます。顕微鏡で喀痰を調べる検査は、見逃しにくさではレントゲン検査にかないませんが、もし、患者さんの痰の中に疑わしい菌がいる場合には、より結核らしいと疑うことができます(特異度が高い)。
患者さんの症状と検査結果を考えて、もし、必要ならば、大きな医療機関への受診を推奨しています。それぞれの検査の質を高めることで、より結核診断の質向上が期待されます。
診断した後も顕微鏡は大活躍
結核診療は、診断をして終わりではありません。ポータブルX線装置の設置によって結核と診断される患者さんが増えていますが、適切な治療につながらなくては、診断した意味がありません。ロシナンテスは診断された患者さんの治療にも、責任をもって関わることを目指しています。

結核の治療では、数種類のお薬を数ヶ月に渡る長い期間内服しなくてはいけません。患者さんと一緒にそれだけの期間をかけて治療するからには、しっかりと治療の効果があるのかを確認することが大切です。顕微鏡検査は診断だけでなく、治療効果を測るために使われています。
顕微鏡検査では、患者さんの痰を顕微鏡で観察し、結核菌の有無や量を確認します。治療の経過とともに菌が減っているかを確認することで、治療が順調に進んでいるかを評価することができるのです。
そのため、顕微鏡検査の質を高めることは、結核診断のみならず、治療効果判定の質を高めることにつながり、地域の結核診療全体の底上げにつながるのです。
地域の結核診療向上を目指した顕微鏡トレーニング
ロシナンテスは6月28日から7月2日までの5日間、プロジェクト対象地域の医療従事者を対象とした顕微鏡トレーニングを実施しました。
1日目:基礎を学ぶ
初日は講義形式で、結核検査の基礎知識や顕微鏡の使い方、検体の取り扱い方、染色手順、検査結果の品質管理について学びました。

午後からは実験室に移動し、検査で使用する染色液の調製も行いました。

2~3日目:実際の検査を体験
2日目と3日目は、実際の痰を使って検査の流れを実践しました。
参加者は痰をスライドガラスに塗り、乾燥・固定した後、染色液で色を付け、顕微鏡で結核菌を観察します。

陽性・陰性の判定や菌の数の評価、結果の記録や報告方法についても学びました。
一見簡単そうにもみえますが、スライドガラスへの塗り方や染色の仕方にも技術が必要であり、見えているものが本当に結核菌なのかを正しく判断するには経験と訓練が欠かせません。
適切な検体を評価できないと、本来治療が必要な患者さんの見逃しや、結核ではない患者さんへの不必要な治療開始が起きてしまう可能性があります。
検査技師さんたちは地域の結核診療において、非常に大事な役割を担っているのです。

4日目:検査の質を守る
4日目は品質管理について学びました。
検査は再現性が大事ではありますが、実際には予期せぬ事態も起こり得ます。検査結果に不一致が生じた場合の確認方法や、誤判定を防ぐための仕組みを学習し、検査の質を継続的に維持する方法を一緒に確認しました。
5日目:知識を広げるリーダーへ
医療過疎地域では、医療者の中でも医療知識に触れる機会は限られています。最終日は、自分の施設へ戻った後に他のスタッフへ技術を伝えるコミュニケーションスキルを学びました。
ロシナンテスでは、研修を受けた参加者が所属施設で知識や技術を共有し、地域全体の結核診断能力向上につなげることを目指しています。

単なる顕微鏡の技術研修のみに留まらず、地域全体の医療を支えるリーダーを育成する取り組みでもありました。
研修の成果と課題
本研修後のアンケートでは、多くの参加者が「知識や技術が向上した」「結核診断への自信が高まった」と回答をいただきました。事前・事後テストの結果も向上しており、研修の効果が確認されました。

一方で、アンケートから現場で何に困っているのか課題も明らかになりました。参加者からは、診断に必要な機器や試薬の不足、検体輸送体制の課題、人員不足などが挙げられました。
医療従事者の能力向上とともに、必要な機材や検査体制の整備も進めていく必要がありそうです。
最後に
結核対策は機材だけでも、人材だけでも成り立たないということを改めて感じる研修でした。
ポータブルX線装置による早期発見、顕微鏡検査による診断と治療経過の確認、そしてそれらを支える医療従事者の技術、地域の医療者・ボランティアさんたちの絶え間ない努力のすべてが揃って初めて、医療を必要としている人へ適切な医療を届けることにつながります。
皆さまからのご支援は、こうした医療従事者の確かな技術となり、多くの命を救う力になります。

これからも現地での活動の様子をブログからお届けしていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。以上、ザンビアから相葉と安藤がお届けしました。またお会いしましょう。
