ハルツームの今を写真に
こんにちは、ロシナンテス理事長の川原です。
写真家の内藤順司さんが、約10年ぶりにスーダンにやって来ました。
内藤さんは、これまで長い間、ロシナンテスの活動だけでなく、スーダンの人々の暮らしや文化を撮り続けてくれた写真家です。しかし、スーダンの政治状況が悪化し、ここ10年ほどはこの国を訪れることができませんでした。
その内藤さんを、私はどうしても、もう一度スーダンに連れてきたかったのです。
戦争によって大きく破壊された街
今年4月、2023年の国外退避以降で初めて、首都のハルツームに入ることができました。
そこで目にしたのは、戦争によって大きく破壊された街でした。

かつて知っていた建物が壊れ、街の姿が変わっている。
しかし、私の目に残ったのは、破壊されたものだけではありませんでした。
その中で、もう一度立ち上がろうとしている人たちがいました。
暮らしを取り戻そうとする人たちがいました。
この人たちの姿を、内藤さんに撮ってもらいたい。
そう思いました。
戦争で壊されたスーダンを記録するだけではない。
そこから立ち上がろうとしているスーダンを残してほしい。
それが、今回、内藤さんに来てもらった一番の理由です。
内藤さんと一緒に、ロシナンテス初代事務局長で、現在は理事を務める海原六郎君にも来てもらいました。高校ラグビー部の二つ下の後輩でもあります。
今のスーダンを自分の目で見てもらい、ロシナンテスとしてこれから何をするのか、一緒に考えたかったからです。
まずは、ポートスーダンへ。
そこでは、ロシナンテス立ち上げ当初にスーダンで活動してくれており、今年再びスーダンに戻ってきてくれた霜田君が待ってくれていました。
ローカルスタッフのイプティサム一家も一緒になり、日本人4人、スーダン人5人の大所帯での共同生活が始まりました。

クーラーのある部屋は内藤さんと海原君に使ってもらい、私と霜田君は屋上で寝ることにしました。
昔、シェリフハサバッラ村で暮らしていた頃も、私はよく外で寝ていました。
あの頃は満天の星空が広がり、いくつもの流れ星を眺めたものです。
ポートスーダンの街中では、あの頃ほど星は見えません。それでも屋外で寝ながら空を見上げていると、昔のスーダンと今のスーダンが、自分の中で不思議につながっていきます。
いよいよハルツームへ
そして、いよいよハルツームへ向かいました。
以前使われていた国際線ターミナルは、戦争で破壊され、今は使うことができません。現在は、かつてメッカ巡礼用に使われていたターミナルが利用されています。空港には、ロシナンテスのスタッフのラビアと、旧知の友人であるファハル教授が迎えに来てくれていました。
空港から街へ向かう車の中から、変わり果てたハルツームの姿を目にしました。

大統領宮殿、軍の施設、情報機関の中枢部など、国の重要な施設が破壊されています。


日本の無償資金協力で建設されたイブン・シーナ病院にも行きました。
建物自体には大きな損傷はありません。しかし、銅線など換金できるものが盗まれたようで、医療機器はほとんど使えない状態になっていました。現在は、細々とクリニックを開いて診療を続けています。
以前は、内視鏡治療や腹腔鏡手術、さらには腎移植まで行い、スーダンの高度医療を担っていた病院です。その姿を見ると、残念としか言いようがありません。
そして、ファハル教授がセンター長を務めるマイセトーマセンターにも行きました。
ここも大きな被害を受けています。それでも、ファハル教授をはじめ、スタッフたちは懸命に復旧作業に取り組んでいました。

このセンターは、長崎大学熱帯医学研究所との共同研究を行ったり、エーザイの医薬品を用いた治験を実施したりと、日本とも深い縁のある施設です。現在は仮の診療所で患者の受け入れを再開していますが、診ることのできる患者数は以前の2割程度だといいます。
ファハル教授から、ロシナンテスにも支援してもらい、診療所をもう一度つくりたいという要望がありました。
私はこの話をロシナンテスの理事の間で議案として提案し、今回一緒にハルツームを訪れた海原君にも意見を聞きました。そして、この要望を受け、支援することにしました。
街全体を見れば、本当に厳しい状況が広がっています。しかし、その中で「もう一度やろう」と立ち上がっているスーダンの人たちがいます。ファハル教授やセンターのスタッフたちも、そうした人たちです。
その姿を見ていると、こちらの胸も熱くなります。
壊された建物だけではない。
失われたものだけでもない。
その中で、もう一度立ち上がろうとしている人たちがいる。
私は、そんな今のハルツームの姿を、内藤順司さんに撮ってもらいたかったのです。
今回、内藤さんは街を歩き、そこで生きる人々、そして復旧に向けて動き始めた人々の姿を撮影してくれました。

戦争によって変わってしまったスーダン。
それでも、ここで生き、もう一度立ち上がろうとしている人たちがいます。

内藤さんが撮った写真を通して、そんな今のスーダンの姿を、なるべく早い段階で皆さんにも見てもらえればと思っています。
