特定非営利活動法人ロシナンテス

活動報告ブログ

ロシナンテスからの活動情報をご案内します。

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現地の文化生活2019.05.15

スーダンに教会堂!?イスラム教が大半を占める国でのキリスト教

こんにちは。事業担当の堺遥です。東京は春の陽気に包まれ、若葉を身にまとった桜の木がいきいきと枝を伸ばしているこの5月。スーダンでは早くも40℃をこえ始めた気候の中、ラマダーンが始まっているようです。

 

さて突然ですが、こちらの写真、どこで撮影されたものだと思いますか?

Cathedral of Our Lady Queen of Africa

実は、私たちが活動しているスーダン共和国北コルドファン州で撮影された写真です。スーダンに教会?と、ちょっと意外な気がしませんか。
イスラム教徒が人口の大半を占めるスーダンでは、毎日決まった時刻にコーランが鳴り響き、街なかで見かける女性の大半はヒジャブを身につけています。そんなスーダンにいると、イスラム文化にどっぷりと浸かった気分になります。しかし、伝統的な宗教やキリスト教を信仰する人々も暮らしているのです。イスラム教のモスクを見かけることが圧倒的に多いスーダンですが、キリスト教の教会もしっかり存在感を放っています。

1961年に建てられたというこの教会は、ステンドグラスや天井の装飾が施されたとても美しい建物です。

ステンドグラスの美しい装飾

壁面にはスーダンの人々にとっても神聖な存在である羊のモチーフが用いられ、マリア像には「アッサラームアレイキ ヤ マリヤム(マリア様に平和を)」とアラビア語が添えられています。

スーダン人にとっても関わりの深い羊のモチーフ

アラビア語が添えられた聖母マリア像

アラビア語が添えられた聖母マリア像

この教会の目の前にはイスラミックセンターと呼ばれる施設があり、立派なモスクが建っています。異なる宗教の共存を思わせる印象的な姿です。

スーダン暮らしの長いロシナンテススタッフのアルタイブ茜によると、過去に対立した歴史はあるものの、スーダンは非イスラム教徒に対しても寛容な国なのだそう。人それぞれが持つ思想や文化を尊重できるというのは素敵なことですね。

川原ブログ2019.04.25

ザンビアでの事業開始準備のお知らせ

ロシナンテスをいつも応援してくださり、本当にありがとうございます。

この度、ザンビアで本格的に事業を開始すべく、準備を進めていくこととなりましたので、皆さまにこの場を借りてご報告させていただきます。

昨年から、スーダンで学んできた知見を活かし、活動できる国はないかと思っていました。また、日本のNGOや団体が一生懸命に他の国で支援事業を行なっており、そこから学べる点があるとも考えました。

そこで、アフリカで活躍する団体や先生がいらっしゃらないかと周囲を見渡していると、昨年3月に出席した式典で、ザンビアでの医療活動に対して山元香代子先生が表彰されていました。山元先生のスピーチの中で、「私が日本にいる間も、ザンビアのスタッフが頑張って巡回診療を行っています」という言葉に感動し、山元先生の活動から学ぶ点があるはずと思いました。
また、東日本大震災で一緒に支援活動をしたこともある徳島を本拠地とするTICO(ティコ、Tokushima International Cooperation)が、ザンビアで医療支援活動をしていたことを思い出しました。我々も北九州を本拠地としており、地方からアフリカの医療支援している団体として共通点も多くあります。さらにTICOは、徳島の地域医療でも大いに貢献しており、我々が学ぶことが多いように思えました。
調べていくと、AAR(難民を助ける会)、ジョイセフ、結核予防会などの団体も医療活動を展開していることがわかりました。
リビングストンに近いジンバという地域にある病院で活躍する三好康広先生は、学生時代スーダンに来訪し、ロシナンテスの活動を見てくださいました。
また秋田大学医学生の宮地貴士君は、スーダンで我々が建設する地域の診療所を見て、ザンビアにも診療所を作ろうと仲間の医学生らとともに頑張っています。

これはザンビアにご縁があると思い、昨年夏と今年の春にスタッフの堺遥とともに現地を視察に行きました。各団体、またそれぞれの方が、本当に素晴らしい活動をされていてとても勉強になりました。ザンビアもスーダン同様、地域の村々には病院や診療所がないところが多く、地方政府での予算が十分でない中、医療をどう届けるのかの課題は同じでした。ザンビアでのそれぞれの団体の取り組みは、今すぐにでもスーダンに紹介したいものもあり、また逆にスーダンでの経験がザンビアで活用できるのではとの実感も持てました。

ロシナンテスを設立して14年目、日本では平成から令和という新しい時代を迎えるこの年に、スーダンとともにザンビアで事業展開を行うことを決めました。

そこで、皆さま方へのお願いがございます。ザンビアでの事業を行うために、我々と一緒に働いてくださる方を募集します。とくにアフリカの保健分野で地域医療に取り組みたい方は、ぜひとも応募してください。
https://www.rocinantes.org/about/recruit/
どうぞ、よろしくお願いいたします。

実は、ザンビアで視察を行っている最中にスーダンで政情不安定との報告があり、堺に後を任せて、急遽ザンビアから戻りました。スーダンに到着した翌日に大統領が解任されるというタイミングでした。民衆は現在も、暫定軍事政権ではなく民政への早期移行を主張しての抗議デモを継続しており、本日4月25日には軍本部前で、大統領解任後最大の抗議集会を予定しています。
現在も落ち着いていない状態ではありますが、民衆の力で勝ち取ってきたこのダイナミックな動きを目の当たりにし、スーダンの国民にとって大切な時期をともに過ごせているというのは、とても感慨深いものがあります。愛するスーダンに明るい未来が開けることを祈りつつ、事業をさらに躍進させていけるよう引き続き尽力してまいります。

スーダン、ザンビアと活動範囲が広がりますが、北九州本部、東京事務所、スーダン事務所、そして開設するザンビア事務所のスタッフが一丸となって地域医療に取り組んでまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

川原ブログ2019.04.12

バシール大統領解任、スーダンでのクーデターに寄せて

いつも、ロシナンテスを応援し、スーダンに関心を寄せて下さり、誠にありがとうございます。

 

さて、ニュースでご覧になった方もいらっしゃると思いますが、4月11日、スーダンにおいて30年間実権を握ってきたバシール大統領の解任が発表されました。これは地方でのデモが発端となっています。昨年12月19日にパンの値段が3倍に値上げされたことに対する抗議デモが地方都市アトバラで起こり、これがスーダン全土に瞬く間に広がっていきました。その後、経済の混乱を招いたのは大統領であると、大統領退陣要求へと変遷していきました。このデモは、大学教員、ジャーナリスト、弁護士、医師らによって構成されたスーダン専門職組合(SPA, Sudanese Professionals Association)などが指導したもので、非暴力に徹し、今まで継続されてきました。

過去に遡ると、1985年4月6日、軍部がクーデターによってヌメイリ大統領を失脚させた歴史があります。今回、この4月6日から、昨年末以来最大規模のデモが行われ、大統領居住域と隣接する軍本部周辺に数万人規模の群衆が集結し座り込みがはじまりました。座り込みから6日目の4月11日午後、スーダン国軍が国営放送を通じて、軍がバシール大統領を拘束したこと、軍評議会が2年間暫定的に政権を運営し、その後に民主的な選挙を行う予定であることをアナウンスしました。

一部報道では軍によるクーデターとなっています。しかし実際は、民衆が主導して反政府デモを継続したことで、最初は大統領の指揮下にあった国軍が民衆側に賛同し、最終的に大統領を退陣させたというもので、民意の勝利と言えるでしょう。

国軍は、バシール大統領に近い人物を暫定政府の指導者に就任させると発表し、民衆は不満を表明していますが、独裁を30年間継続してきたバシール大統領を平和裡に退陣に追い込んだ民衆の力には驚かされるばかりです。

 

私が大使館の医務官としてスーダンに赴任してきたのが2002年。まだ内戦の最中でした。それから17年、スーダンの状況は劇的に変化してきています。2005年、内戦終結後にスーダン第一副大統領に就任した南部出身の指導者ジョン・ギャランが航空機事故で亡くなり、国中が大混乱になりました。その後6年間の暫定政権を経て、2011年、南スーダンが分離独立し、スーダンの主な収入源である原油のほとんどが南スーダンの所有となりました。2017年、20年続いた米国からの経済制裁が解除されましたが、スーダンの経済状況は改善せず、民衆蜂起からの大統領退陣へとつながりました。バシール大統領には国際刑事裁判所から、2003年に勃発したダルフール内戦に起因して逮捕状が出されています。また米国からテロ支援国家に指定されていることもあり、バシール大統領退陣が、スーダンを取り巻く状況に良い影響を与えると思われます。

 

現在ロシナンテス・スーダン事務所のスタッフの安全は確保されています。ハルツーム空港が閉鎖され、政府機能が麻痺しているなど、今後どのようになるのか不透明な部分が多い状態ですが、状況を見極め、日本人スタッフの国外退避なども含めて検討していきたいと思います。

ロシナンテスは、2006年にスーダン政府に国際NGOとして登録され、現地の人たちとともに、病院のない地域に医療を届ける事業を行ってきました。巡回診療を行い、診療所を建設し、井戸を掘り給水所を設け、女子小学校を建設し、地元の人たち、地方政府に引き渡してきました。これらの事業が継続されさらに発展していくことを、引き続き見守っていきたいと思います。今はスーダン国内が混乱していますが、予定していた事業に関しては、混乱が収束し、安全が確保される状況を待って実施していきたいと思います。

 

新しい政治体制のもと、スーダンに平和が定着し、人々に笑顔が広がることを願いつつ、ロシナンテススタッフが一丸となって、スーダンの人たちと力を合わせて、地域社会へ医療を届けられるように今後も頑張りたいと思います。

 

みなさま、ロシナンテスの応援をどうぞよろしくお願い申し上げます。

コラム2019.04.07

スーダンで健康に過ごすために迫られるたくさんの「判断」とは

貧しい人ほど、自分の健康について多くの「判断」をしなければならない環境にある、という説があります*¹。

日本のような先進国では、水道設備が整備されており、自分で浄水をする必要はありません。会社員であれば健康保険料は天引きされ、予防接種は学校や病院等で推奨されます。つまり私たちは、基本的な健康について自らの判断を要求される場面が少ないのです。それは、これまでにさまざまな制度が整備されてきたからです。

一方途上国の貧困層は、川や池の水をそのまま飲むか、浄水を行うための塩素剤等を購入するか等を、お金や労力、時間、そして家族の健康を天秤にかけて選択する必要があります。医療費はすべて自分で貯蓄をしなければならず、日々の生活の中でどの程度未来の医療費を蓄えていくのか、自分たちで決めなくてはなりません。また予防接種も、自分が持っている情報の中で「受診する」ことを決め、遠くの診療所まで行くという行動を起こす必要があります。

給水車から購入した水をためておく設備

このように貧しい人々は、すでに整った環境にいる人々よりも、自身の健康を保つためにずっと多くの「判断」を迫られています。

 

今日4月7日は、「世界保健デー」。こうした環境に置かれている人々の健康を守るため、国際保健について啓発を行うための日です。1950年に世界保健機関(WHO)により制定され、毎年テーマを定めて様々な啓発活動が行われています。

 

UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)とは?

昨年のテーマは「UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)」。

耳にされたことはあるでしょうか?昨今、途上国での保健事業には欠かせないキーワードとなっています。

UHCとは、「すべての人々が保健医療サービスを受けられる状態」です。より詳しく言えば、すべての人が、適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関する十分なサービスを支払い可能な費用で受けられる、という状況を指します。

 

日本の当たり前と厳しい世界の状況

世界保健機関(WHO)によれば、2000万人の幼児が必要な予防接種を受けられません。また、およそ1億人が、医療費の支払いがかさんだことによって、1日1.9ドル以下という貧困ライン*²以下での生活を余儀なくされています。

病気になったときに、近くに病院があり、きちんと治療が受けられること。これは日本ではほとんどの人にとって当たり前ですが、世界にはこれが当たり前でない地域がたくさんあります。ロシナンテスの活動するスーダンもそのひとつです。

 

剥がれ落ちかけた天井

スーダンの現状は?

スーダンの村落部には病院が十分にありません。また、医師や看護師などの医療人材も、病院の設備も不足しています。

私の訪れた北コルドファン州のオンムダム・ハージ・アハメド地域にある診療所は、1棟で周辺人口の約16,000人の住民をカバーしている、という状況でした。

カバーをしているといっても、医師はたったの1名です。建物は老朽化しており、天井は剥がれ落ちてきています。病院内の設備も、整っているとは言い難い状況です。

しかし、このような状態でも、自力で行ける範囲に診療所がある住民はまだましと言えます。住民は、通常、徒歩かロバに乗って診療所までやってきます。では、徒歩でもロバでもたどりつけない距離にしか診療所がないとすれば、どうでしょうか。診療所から離れた場所に住んでいる場合、そもそも診療所に行くこともできないのです。

まだまだ、スーダンではUHCの推進が必要です。

 

仕組みを整えることの重要性

私自身は幸いにして、予防接種を受けるかどうか、病気になった場合に病院に行くかどうか、といった内容で、深く悩んだことはありません。それは、これまでに多くの人々が築きあげてきたさまざまな制度のおかげなのです。それほど、保健医療において仕組みづくり、というのは重要だと思っています。

ロシナンテスは、巡回診療、診療所の建設や、給水所の建設等を通じて、スーダンに「医」が届くための仕組みを整えています。少しでもスーダンに仕組みを普及できるよう、これからも活動を続けていきます。

 

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*1(アビジット・V・バナジー (著), エステル・デュフロ (著), 山形 浩生 (翻訳), 『貧乏人の経済学―もういちど貧困問題を根っこから考える』, みすず書房, 2012)

*2下回ると、食料・衣服・衛生・住居について最低限の要求基準を満たせないという基準

コラム2019.03.22

不衛生な水をそのまま飲用して感染症も。スーダンの水事情とは

世界水の日に、スーダンの水事情を考える

世界水の日は、水の大切さや、きれいで安全な水を使用できるようにすることの重要性を世界中で考えるための日です。1992年12月の国連総会で制定されました。

世界では、8億4,400万人、およそ9人に1人が清潔な水を利用できません。

飲めば体調を崩すとわかっていても、不衛生な水を子どもに飲ませるしか選択肢がないお母さんたちがたくさんいます。安全な飲料水が手に入らないというだけではなく、水くみに時間を取られ、働いたり学校に通ったりする時間が取れない、農作物を育てるための水が確保できない、といった問題も発生します。また、不衛生な川やため池の水をそのまま飲用しているために、感染症にもかかりやすくなります。

 

砂漠の国、スーダン

Photo credit: Junji Naito

水事情はスーダンでも深刻です。スーダンというと砂漠、というイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実際、国土の大半は北のサハラ砂漠から続く砂漠地域です。

Google Earthで見ても、大半が乾いた地であることがわかります。

スーダンの年間平均降水量を見てみると、南部のウガンダ国境付近では最大600ミリ程度ありますが、北上するにつれ少なくなり、エジプト国境付近では25ミリ以下まで減少します。東京の年間平均降水量が1500ミリ程度であることを考えると、雨量の多い地域でも東京の3分の1程度しかないということがわかります。

スーダンと南スーダンの年間降水量分布(Fanack)

 

スーダンの水の課題

水が貴重なスーダンでは、人口のおよそ40%が家の近くで清潔な水を手に入れられない環境で生活しています。地域によって水を得る方法が変わってくることから、その課題も様々です。

 

川の近くでは、川の水を利用するのが一般的です。スーダンの代表的な川「ナイル川」は、エジプトから流れ込む世界最長の河川で、スーダン領内でアトバラ川、青ナイル川、白ナイル川といったいくつかの支流に分かれます。このナイル川本流と支流の沿岸地帯では、川から飲料水や灌漑用水を確保しています。

特に都市部では、川の水を浄水場で処理し各家庭へ配水する水道が張り巡らされており、日本と同じように蛇口をひねれば水が出てくる環境が整っています。しかし雨期の間には、水量と濁度が急激に上がるため、浄水場の処理能力が追い付かず、蛇口から出る水も茶色くなってしまうという課題があります。下記動画は、理事長川原の自宅の水道です。普段はそのまま飲めるきれいな水が出ますが、雨期になると茶色く濁った水が出てきます。

 

水道の恩恵を受けられていない沿岸の小さな村落では、直接川から水をくんで利用しているところも数多くあります。しかし川には、人や家畜の排泄物を含む様々なものが流れこんでおり、特に下流になればなるほど水は汚染されています。人々は、感染症の危険があることは理解していますが、他に選択肢がないために、不衛生な水を飲まざるを得ない環境にあります。

 

川から離れた村落では、水を確保するためには、井戸のようなほかの手段を考える必要があります。しかしスーダンの地下水は深いところにしかなく、井戸を作るには大掛かりな掘削が必要です。また水を引き上げるポンプを動かすために、電気の通っていない村落では発電機やソーラーパネルも必要となり、さらに多額の費用がかかります。そのため住民の力では設置が難しく、雨期の間にできた池などから直接水をくんだり、給水車から高いお金を払って水を買ったりしている地域も多いのです。

年間降水量分布の黄緑より南のエリアでは、雨期の間に降水量が増大します。そのためこの雨水を利用して、ハフィールと呼ばれる雨水貯水池を活用している村落もあります。ただ、家畜の糞尿が入らないようフェンスで囲ったり、浄水の仕組みを取り入れたりせずに利用している場合、川や池と同様に汚染された水を飲むことになります。

 

水事業を進めていきます

このほかにも、スーダンは水にまつわる課題を数多く抱えています。ロシナンテスは、医療活動と同時に水事業を推進しています。いくら医療を届けても、水が原因でたびたび病気になる人々を見て、やはり根本的な問題解決のためには水の問題に取り組む必要があると考えたからです。

きれいな水が、百の薬よりたくさんの命を救うこともあります。すべての地域の問題を一気に解決することは難しいですが、ご縁をいただいたところから、少しずつ状況を改善できるよう事業を進めていきたいと思います。